00年、ヤマハはFRP(Fiber Reinforced Plastic)胴のスネアを発売した。
「FRP」と表記されたドラムは、私の記憶には無い。「ファイバー」「グラスファイバー」ならば、その昔にパールやタマから製品が出ていた。しかし、ファイバーってなに? 繊維ってことなのかな。それだけでは胴にならないよね。なんらかのつなぎがないと。「FRP」ならつなぎはプラスチック。なんだよ「ファイバー」って。
以前、パールのグラスファイバー胴であるFX(プレジデント・エクスポート)を持っていた。モノは、グラスファイバーが混入した樹脂だ。って、FRPじゃないのか。さらに、PX(プレジデント)はファイバーだ。グラスじゃないファイバーってなんだろ。カーボンでもケブラーでもないだろうしな。
樹脂の胴といえば、一般的なのがアクリルだ。これはかなり昔から使われている。フェノール樹脂も、以前のヤマハでラミネートされて使われていた。しかし、新素材ってあんまり使われてないね。カーボンはあるけど、あまり一般的ではない。ポリプロピレンとかウレタンとかABSとか塩化ビニールとかってないのかな。ブローで安く作れそうだし。でも、なんとなくプラスチックや樹脂って安物イメージがあって、売れなさそうだもんね。「新開発、硬質塩化ビニール胴」っていわれても欲しくない。だからファイバーという表記だったのかも。楽器のユーザーって保守的だから。それを考えるとFRPという表記は冒険だったかも知れない。その冒険がたたったのかどうかはわからないが、すでに生産が完了している。
01年、菅沼孝三さんのシグネチャーモデル、FSD1455KSが発売された。そのころ菅沼さんが使っていたのは、デイブ・ウェックル・シグネチャーのアルミ。デュアル・ストレーナーを気に入っていたようだ。しかしながら、自分のシグネチャーでそれを使うのははばかられたのか、スナッピーは全面当たりにしてきた。これは彼が敬愛するビリー・コブハムのシグネチャーと同一だ。胴もフツーの材料を選ばずにFRPにしてきた。菅沼さんらしいが、ホントにFRPがよかったのかな。なお、現在のシグネチャーはコパー(カッパー、銅)だ。
一時、同じヤマハ製FRPの14x5.5を持っていた。上も下も出なくて、地味な音だった。なので早々に手放してしまった。なのに、なぜ孝三シグネチャーを買うのか? ただのミーハーとしか思えない。実際の所、このスネアはあんまり売れてないだろうな。買うのも菅沼さんの生徒や熱烈なファンなのだろう。FRPで全面当たりだもんね。売れそうにないスペックだ。
胴はFRPの3mm厚。ファイバーはグラス・ファイバーだ。着色がされておらず最初は白っぽい透明だが、紫外線などによる経年劣化によって黄ばんでくる。ワタクシのもそこそこ黄色くなっている。メーカーは「半透明のカラーは、時間経過と共に味わい深い琥珀系のカラーに変化していきます。」とのたまわっている。
なんだかんだで、いつものようにバラシだ。ラグはメイプルカスタムのものなので、慣れている。特に問題はなく作業は完了。いつものように、シェルのコーティングはブリス、金属部品にはクレ・スーパーポリメイト。各部をグリスアップ。エッジにはろうを塗布。チューニングボルトのワッシャーにはタマの黒プラスチックを追加。スナッピーはオリジナル。ヘッドはレモ。ミュートは最近定番のムーンジェル。
このスネアのポイントは、全面当たりであることだ。当たり量を調整するガイドがあって、そのセッティングで音が変わる。下げると全面っぽくなり、上げると内面っぽくなる。叩きながらいじった結果、全面〜〜〜ってことで一番下にしてみた。
ではバンドで叩いてみましょう。あー。
残念ながら手放してしまった。
YAMAHA Kozo Suganuma Signature Snare FSD1455KS
(ヤマハ 菅沼孝三シグネチャー スネア)
サイズ: 14×5 1/2
シェル: FRP 無着色 3mm
フープ: 亜鉛ダイキャスト
スイッチ: H型/G型 両側調整
ヘッド: 打面 レモ・コーテッド・アンバサダー
裏面 レモ・スネアサイド
スナッピー: ハイカーボン 20本 全面当たり
年式: 01〜06年
半透明なので、電球を入れれば間接照明になる。インテリアとしても使えるので、便利です。