ヤマハのドラムは自分のルーツだ。初めて買ったセットはヤマハのYD9000。その後9000Rに買い換え、ジャズに行くまではこのセットしか持っていなかった。当時、ヤマハのドラムはサカエリズムという会社が日本で作っていた。

　17年、サカエが倒産してしまった。19年に「SAKAE Osaka Heritage」として復活したのだが、胴は台湾企業からのOEMとなってしまった。胴の製造設備は、散逸してしまったのだろうか。

　そんなことになってしまったので、旧サカエリズムが作っていた日本製のドラムを集め始めてしまった。

　昨今、YD9000と9000RをひっくるめてYD9000と呼んでたりするが、我々（ってだれ？）にとって両者は明確に違うものだ。YD9000はYD700の後継として76年に発売されたフラッグシップモデルだ。9000Rは、そのアップグレード版として79年に発売された。どちらも胴のスペックはバーチ中厚なのだが、外装については9000が基本カバリング、9000Rがラッカー塗装だ。しかし、9000もリアルウッドだけはラッカー仕上げだ。

　私が学生時代に買ったのは9000。すでに9000Rも出ていたのだが、分をわきまえて9000にした。価格差がそれなりにあったのも理由だ。後に9000Rに買い換えたので、どちらもメンテのためにバラしたことがある。両者のラグが見た目は同じなのに、厚みが違う別物だったことに驚いた。両者の音はおおむね同じで、10タムの音は好きだった。キックはイマイチまとまらず、メイププルカスタムに買い換えたいなと思ったものだ。友人はキックだけ8000にしていた。

　このSD950Aは、YD9000シリーズのスネアで、基本的なスペックは9000Rのスネアと同じバーチの中厚胴だ。スナッピーは全面当たりなのだが、そのガイドの仕様が年式によってちがう。初期の物はなんの調整もないもの。これだとスナッピーのスネアサイドへの当たりが調整できない。その後、高さが調整できるようになり、さらに樹脂のガイドが付くようになった。このスネアに着いていたのは初期の高さが変えられないものだ。スナッピーを内面当たりに変更したため、外してしまっている。また、ラインナップに950A（深さ5インチ）と955A（5.5インチ）があった。9000Rも同様だった。これって、後にも先にも他には無いと思う。あー。SONORのD505（5.75インチ）とD500（5インチ）が近いか。

　今回、カバリングを外して塗装することを前提とした。なので、まずミラーシルバーのカバリングを剥がした。これが結構強力な両面テープでくっつけられていたので、かなり苦労した。また、このカバリングは、たぶんステンレス板材の鏡面仕上げ。0.2〜0.3mmくらいかな。ちょっとびっくり。塗装に使ったのはXOTICのXP-OG1。ワトコオイルでいいかとも思ったが、ギター用の塗料で扱いやすいとのことで使ってみた。胴の表面仕上げはけっこう時間がかかった。全面当たりなのでスネアベッドが無い。そこで、1mmくらい削ってみた。塗装は説明書通りとしたが、仕上げをマニュアル通りペーパーにしたところイマイチだった。なので、もう一度仕上げに塗って塗りっぱなしとした。

　しかし、リアルウッドの中古は２万えん台くらい。リアルウッドを探した方がいいんじゃね、な工数のかかり方だった。

　フープだが、ボトムのフープは全面当たりスナッピーをよけるために、スナッピーガードが大きめに張り出しているタイプ。これって、スタンドに置きづらいのね。なので、内面当たり用の穴の開いているやつに交換した。友人が中華製のダイキャストフープをアマゾンで買って、それがまあまあだったということなので、中華製にしてみた。ボトムだけでは出品されていなかったので、トップ・ボトムのセットで購入した。安い。しかし、物は安いなりで板厚も1mmちょいくらい。高さも低い。でも、まあいいかってことでボトム側のみ中華とした。若干真円度もずっこけていたので、ハンドパワーで修正した。

　パーツは洗浄してクレスーパーポリメイト仕上げ。各部グリスアップ。ヘッドは定番のレモ・コーテッド。エッジにはロウを塗布。テンションボルトのワッシャーはTAMAのナイロン。スナッピーはパールのノーメッキ。はいできあがり。

　では、叩いてみましょう。うん。まあ、バーチ中厚ってカンジ。ムーンジェルを貼って倍音を整理。思ったより気持ちデッドだけど、スナッピーの反応も好みだし、まずまず使えるかな。

　40年前のトップモデルだが、こんな値段で買えてしまうのだな。

YAMAHA YD-9000 Snare SD-950A
　　（ヤマハ YD-9000）
　サイズ：　　　14×5
　シェル：　　　バーチ　７プライ　6mm
　カラー：　　　リアルウッド風
　フープ：　　　スチール・プレス　10テンション
　スイッチ：　　両側調整
　スナッピー：　パール ノーメッキ 20本 内面当たり
　ヘッド：　　　レモ・コーテッド・アンバサダー / スネアサイド
　年式：　　　　70年代後半