スティーブ・ガッドについてはこちらを。
ガッドは永らくヤマハのドラムを愛用している。フロアタムの位置にラックタムを並べるのも、彼が元祖だ。そして昨今のシグネーチャーブームの中、満を持して登場したのがこのモデルである。
こりゃ買いか、といいたいところだがちょっと待て。このスティーブ・ガッド・シグネーチャーはなんと6種類もあるのだ。フツーは1種類か2種類なんだけどね。なにを考えているやら。
その6種類とは以下である。
・メイプル 14×5
・メイプル 13×5
・バーチ 14×5
・バーチ 13×5
・ブラス 14×5半
・スチール 14×5半
こんなに作ってどうすんのかね。選べないじゃないか。
ヤマハのカタログには、シグネーチャー・モデルの所にセットの紹介がある。そこに、ガッドはスチールを使っていると出ている。そのスチールがネットに中古で出ていたので、買ってみた。
特徴は以下である
1)スネアベッドの形状が特殊
2)スナッピーの本数が少なくレイアウトも特殊
3)黒い(リムも黒い)
4)リムは薄っぺらなフツーのスチールプレス
1と2によって、ノイズの少ないタイトなスナッピーサウンドが得られるということだ。黒はガッドのイメージカラーだ。リムはなぜか薄いスチールのプレスだ。前はアルミの厚いプレスの「パワー・フープ」、最近はスチールで厚いプレスの「ダイナ・フープ」や亜鉛ダイキャストなんかがヤマハのスネアによく使われているのだが、なぜかぺらぺらのリムである。ガッドの好みなのだろうか。
ヘッドは音の明るいエバンスのUNO58コーテッド(もらいもん)にした。また、スネアサイドはレモのフラットタイプにしてみた。これは、ラディックのスネアサイドの人気が高いのでマネしたやつだ。本家ラディックのものは明るいサウンドで、私も最もよく使うスネアサイドヘッドだ。レモのものは今回が初の使用だが、きっと明るいのであろう。この明るいヘッドの組み合わせでこの音というのは、なかなか興味深い。なお、OEはレモのパワーストローク3とスネアサイドはディプロマットという暗めの組み合わせだ。
さて、試奏してみよう。たしかにスナッピーの反応が独特である。ぱきぱきした音が押さえられているが、よく反応する。なかなか好みだ。音は高域が少なく、パワーはかなり少ない方だ。オープンリムショットも、タッチが柔らかい。派手さは全くない締まった音になっている。
最近、スネアはパワーがあまりなく、倍音も少な目の方がいいのかなと思っている。通常、ライブやスタジオで使うセットは、国産のパワーが無いものが多い。そんな中でパワフルなスネアを使っても、バランスが崩れてしまう。アマチュアのドラマーで、スネアの音がでかすぎなヤツは死ぬほどいるが、タムの音がでかすぎるというヒトは、見たことがない。また、パワフルなソナーのスネアを録音で使って、芳しくなかった事もある。ガッド自身、ハイドローリックという極端にデッドなヘッドをタムに使っていたことで有名であるが、これは録音スタジオでの音づくりを重視したものだ。当時のレコーディング技術では、倍音に富んだ音よりも、加工しやすくかぶりの少ないデッドな音の方が好まれたのだ。
ガッドがこのスネアを使っているのは、非常に興味深い。最近は、薄胴+ノーミュートのオープンなサウンドがはやりであるが、我々の使い勝手を考えると、ガッドモデルのような選択も捨てがたいと思う。
YAMAHA SD-255SG Steve Gadd Signature(ヤマハ)
サイズ: 14×5.5
シェル: スチール 1.2mm
カラー: ガンメタ
フープ: スチール・プレス 1.6mm 10テンション
スイッチ: 片側調整
スナッピー: ヤマハ ハイカーボン 10本(ガッドモデルオリジナル)
ヘッド: 打面 エバンス・UNO58コーテッド
裏面 レモ・スネアサイド・アンバサダー・フラットタイプ
年式: 2000年前後
追記:
売却されました。