小山太郎さんが所有しているYD-700のスネアをメンテした。これを機に、YAMAHAの歴史をひもとくべく、もう1台いじってみた。
YD-*00というシリーズは1971年に発売された。一部では、YD3桁と呼ばれている。ヤマハの歴史はここをクリック。フラッグシップはYD-700で、他に600、500、400、300、200とあるようだが、仕様の違いがよくわからない。ネットにもほとんど情報が無い。YD-700に関しては、小山さんが所有している物と、宇都宮のジャズバー近代人にある物と、2セットのサンプルがあるのでだいたいの仕様がわかる。最大の特徴は、切削リムがすべてのタムに付いていることだろう。
このスネア、タイトルはYD-600としてあるが、実はよくわからない。
特徴は、YD-700のフープが切削リムなのに対し、プレスフープであることだ。また、YD-700は10テンションだが、こちらは8テンションだ。スイッチはYD-700と同じ、グレッチのライトニング・ストレーナーとよく似たリンク構造になっている。ライトニングには無いスナッピーの調整機構が付いているのも共通だ。
ということで予測してみた。
予測1:
YD-700: 切削リム 10テンション
YD-600: プレスフープ 8テンション
予測2:
YD-700: 切削リム 10テンション
YD-600: プレスフープ 10テンション
YD-500: プレスフープ 8テンション
参考:YD4桁シリーズ
SD-0**: 切削リム 10テンション
SD-9**: プレスフープ 10テンション
SD-7**: プレスフープ 8テンション
ということで、たぶんYD-600かYD-500と思われるが、希望的観測でYD-600としてみた。
では、ばらしてみましょう。なんと、オリジナルっぽい「YAMAHA」の古いヘッドが張ってある。これはレアかも。保存保存。ヘッドがこんなカンジであり、全体に使用感は少なく消耗ほとんど無いのだが、長くほっぽっておかれたようで、さびはかなり浮いている。
胴は7mmくらいで6プライだ。材質だが、結構茶色いプライもある。マホガニーか南洋材のメランティあたりだろうか。YD4桁シリーズのSD-7**はバーチ+メランティということになっている。
しかし、穴あけの加工がひどいね。内側に割れが生じている。いかんなあ。
ラグだが、YD-700とたぶんメッキが違う。シリアルからすると、こっちの方が古いのだが、表面のメッキの劣化はこっちの方が激しい割に、ラグ内部の腐食の析出は、YD-700の方が多い。途中で手配を変えたのかな。
全体に構造はフツーなので、フツーに洗浄し、胴はワックスをかけ、パーツはクレ・スーパーポリメイトでコーティング、各部グリスアップして組む。ヘッドはレモで、エッジにはろうを塗布。
小山さんのメンテはオリジナル重視だが、こっちは自分で使うので、内蔵ミュートを撤去し、テンションボルトのワッシャーはタマのナイロンを投入。スナッピーはオリジナルを保存してパールのノーメッキだ。
それと、ラグの処理がちょっと違う。70年代くらいまでのラグは、ナットをスプリングで保持する構造が主流だ。しかし、このスプリングが結構鳴るのよ。ビンテージドラムの胴を叩いてみると、きーん、と鳴るのがわかる。ソナーは、ウレタンを入れてスプリングをミュートしてたりする。そこで今回は、シンサレートを丸めて挿入しミュートしている。しかしながら、ビンテージの音はこのスプリングもあっての音なので、オリジナル重視派にはすすめない。
はい完成。
ライブで叩いてみた。なるほど。YD-700と比べると、フープが軽いし8テンションということでオープン。高域も出る。スナッピーの食いつきも悪くない。とはいえ、比較的マイルドで、胴の剛性はあんまり高くないカンジ。
しかし、スイッチ下部がフープとメタコンするのは設計ミスか。深さが6.5インチだと問題無いんだけどね。
ということで、十分使えます。
小山さんが、YD-700のカタログを持っているかも知れないとのことなので、発掘を期待している。
YAMAHA YD-600 Snare
(ヤマハ YD-600)
サイズ: 14×5
シェル: バーチ+? 6プライ 7mm
カラー: ジェット・ブラック(カバリング)
フープ: スチール・プレス 1.6mm 8テンション
スイッチ: 片側調整 ライトニング風
スナッピー: パール ノーメッキ 20本 内面当たり
ヘッド: 打面 レモ・コーテッド・アンバサダー
裏面 レモ・スネアサイド
年式: 70年代前半