弦楽器

Original Telecaster

 このギター、パーツを揃えたものの組むヒマが無い、という友人から2年半前に譲ってもらったもの。この連休で組んでみようかと思いたった。

 その昔、ロックやフュージョンのギターを弾いていた。ギターもよく改造していたが、ここから組むのは初めて。

 まず、「ギターを組む」について説明してみる。

 市販初のソリッドボディ・エレキギターは、49年に発売されたフェンダー・テレキャスターだ。この辺、細かいハナシはあるがひとまずそうしておく。開発したレオ・フェンダーさんは、ギターを工業製品として合理化した。ボディは平板をギターの形に切り、部品を付ける部分をボディ片側からくりぬいた。また、ネックはボディにネジで取り付けた。この構造のおかげで、工場での大量生産が容易になった。

 それを見たギブソンは、52年にレスポールを発売した。このギター、54年に「チューン・オー・マチック」というブリッジ、57年にハムバッキングピックアップを搭載し、ほぼ完成型となる。

 54年に、フェンダーはシンクロナイズド・トレモロというブリッジを搭載したストラトキャスターを発売する。これは、世界シェアNO.1のギターで、多くのミュージシャンが使っている。
 
 この、テレキャスター、レスポール、ストラトキャスターは、その後の音楽界での主流となり、今でも市場占有率が高い。また、これらのパーツは、その後のモデルに多く流用され、デファクトスタンダードとなった。

 アフターマーケットでは、これらのパーツに対してリプレイスメントパーツが開発され、大きな市場をもたらした。テレキャスターやストラトキャスターは、パーツのみならず、ボディやネックもアフターマーケットで手に入れることができる。それらを集めて組み立てれば、完成品のギターができあがるのである。

 このテレキャスター、友人が、レッドウッドトップという珍しいボディを、ヤフオクで見つけて落とし、いつか組もうと思って部品を揃えていたものである。カレの家庭の事情から、ワタシの所にやってきた。

 このパターンの楽器自作で、一番ハードルが高いのは塗装だ。ワタシはドラムも組むのだが、塗装は、パーツ屋にクリア塗装をしてもらうか、自分でクリアだけ吹いて外装をカッティングシートとするか、ワトコオイルで仕上げるかの三択だった。今回、ネットでエキゾチックの塗料XP-OG1がカンタンでいいってことなので、スネアで試したらまずまずだった。なので、2年半寝かしておいたこいつを組むことにしたのだった。

 まず、パーツを確認。フロントはハムバッカーにすることにした。いくつかの部品をサウンドハウスその他で購入した。

 次に、すべてのパーツを仮組みする。最初に、ペグとナットを組み、1弦と6弦を張ってブリッジの位置を出す。テレキャスって、ブリッジの取り付けが簡単な代表かも。ノーマルのストラトは、ネジ6本をかなり精度良く組まないと、トレモロがスムーズに動かない。レスポールのTOMとか、スタッドを打つヤツも精度が厳しそう。テレキャスだと、ブリッジが止まってればいいもんね。さすがレオ•フェンダー。それでも、下穴を開けるのは緊張した。

 アウトプットのジャックが、もらったものは付かなかった。これは後回しでよし。せっかく組んだパーツだが、すべて取り外した。当たり前だけど。

 次はざぐりだ。フロントピックアップは、ハムバッカーにするから仕方ないけど、リアとコントロールキャビティも削る必要があった。工具は、トリマーなど持っているハズもなく、彫刻刀。ああ疲れた。

 次に、塗装前のサンディングに移る。ネックはキレイなのでこのまま。指版にマスキング。

 ボディの表裏はキレイなのだが、側面のルーティングがイマイチででこぼこしている。これをならす。

 120番から初めて600番まで。低い番手はホームセンターで買ったグレーのから研ぎ用というやつがいい調子。クルマで使うサンディングブロックを使用。しかし、ヤスリ跡がかなり残るのね。なので、番手の最後は一方向に仕上げる。まるでヘアライン仕上げ。表裏は耐水600番をかける。これでいいかと思ったが、もう少しやるか。800番が切れていたので1000番。側面もかけておしまい。

 塗料はエキゾチックXP-OG1。オイルだけど塗膜ができるというやつ。スネアで練習しておいたので、なんとなくフンイキはわかっているつもり。塗装ブースは自宅に特設したリゾート風。梁に荷造り用ビニールヒモをかけ、S字フックで脱着できるようにした。シンプルながら堅実な作りだ。悪く言えばビンボーくさい。

 ではネックから塗っていきたいと思います。YouTubeで、なんかするときみんな「○○していきたいと思います」って言うのはなんで。「○○します」じゃダメなんかい。では、塗っていきたいと思います。白いTシャツの端切れで塗料を伸ばす。はい。作業時間3分。

 ボディは、1000番でウェットサンディングしようと考えた。では塗料を投入。あらー。すごい吸い込むね。ホント吸い込むね。ウェットにならないよ。ポタポタポタ。と、なんと、塗料が足りないフンイキ。わお。スネア1台塗った後、残量を確認していなかった。なんとか全体に回したが、結構ムラがある。あー。

 サウンドハウスで、塗料を2本追加購入。次の日に来るのがすごいね。

 塗料が来たので2回目の塗装をおこなう。まず、指定通りに600番で中研ぎをおこなう。600番って荒いとおもうんだよな。かなり削れてしまう。エッジ部とか。しかしながら、素直に取説に従うワタシ。また、削りカスが塗装面に付着するので、注意深く進める必要がある。

 そして2回目の塗布。あれ。粘度が低い。そもそも1回目の塗料は揮発してたのかも。で、塗り込む。まずまずムラも少なくなった。塗料の使用量も1回目よりかなり少ない。なんとかなりそうかな。

 この工程を3回おこなった。これで、4回重ね塗りしたことになる。

 この後は、中研ぎを1000番にしてみる。ネックのグリップはこれでいいカンジ。ボディが悩ましい。スネアの時、最後は塗りっぱなしにした。ニトロセルロースラッカーみたいな、ぬるっとしたカンジが良かった。で、1000番+から拭きでも、それなりなフンイキ。2000番に進めてコンパウンドでもいいのかも。

 結局、ネック、ボディともに薄く塗り増した。これを最終として、1週間おいた。

 1週間おいて、塗装の状態を確認。ん〜。まあまあだね。

1)ペーパーかけて、コンパウンドかけて、グロスに仕上げる。
2)このままの、セミグロス。

 2)でいこう。基本、塗装はこのままで、ネック裏だけは1000番をかけてサテン仕上げとした。

 次に、部品を取り付ける穴に、導電塗料を塗った。

 これを塗るとシールド効果が得られるので、ノイズが少なくなる。高級ギターにはだいたい塗られている。しかし、高域が落ちるので塗らない、というものもある。高校時代、導電塗料は「ドータイト」一択だった。まだあるのね。これ、高価なのでイナカの高校生にはなかなか買えないものだった。さらには、有毒とか言われていた。なので、ある程度おカネが自由になっても、高校時代と同じくアルミホイルを貼っていた。今回、初めて導電塗料を購入した。ソニックっていうギター工房が出してるヤツ。安いし、なんと水性。ありがたい。

 ちゃちゃっとマスキングして塗る。筆は百均で5本100円。はいできあがり。いろいろいい時代だなあ。

 パーツを組む前にピックアップの位相と磁極をチェック。エレキギターは、弦の振動をピックアップで拾うのだが、その位相を合わせないと、ふたつのピックアップを混ぜるとき(ハーフトーン)に変な音になる。詳しくはググってね。それと、フロントのハムバッカーを、ハーフトーンの時はタップする。その時にノイズをキャンセルするように、磁極が逆の方のコイルを使うようにする。その辺もググってね。

 ピックアップは、フロントにダンカンのSH-2「ジャズ」、リアをフェンダーとすることにした。他に、ESPとシェクターのモンスタートーンを頂いたのだが、これらはフロント・リアのセット。セットを崩すのがもったいないので、リアは単品のフェンダーにした。我々世代のギタリストは、だいたいピックアップを交換したことがあるんじゃないかな。って、自分の周りだけかな。で、そんな人たちには、以下の知識がある。

1)ダンカンやディマジオなど、リプレイスメントのハムバッカーの多くは、ギブソンと同じ位相にしてある。
2)ギブソンとフェンダーは逆位相である。

 なわけで、ダンカンとフェンダーは逆位相。ダンカンの配線図をネットで確認。現物は、テスターで調べる。はい。逆位相でした。でも、SH-2は四芯なので問題無い。次に磁極を調べる。フェンダーと磁極が逆なのは、SH-2のノンアジャスタブルポールピースの方のコイル。これはコイル1だそうなので、タップ時はこっちを使う。以上で配線は決定した。

 配線材もハンダも、以前いろんな友人にもらったもの。配線材は、ビンテージ風とかいろいろあるが、ベルデンにしてみる。これ、硬くて太いので、やりづらいなあ。回路は、ハーフトーン時タップ。コンデンサーはオレンジドロップ。

 もらったジャックプレートは、ソリッドで、たぶんブラス+クロムメッキの高そうなものだが、径がでかくて付かない。ESPの、これまたソリッドの、かっこいいジャックプレートを買ってみた。しかーし、これもフィットしない。というのも、テレのジャックの所って、ホンモノは平面になってるのね。だけど、こいつは曲面なので、テレ用が付かない。そこで、汎用曲面用とレスポール用を買って、現物合わせをした結果、クロムの曲面用とした。ちょっと苦労したけどできあがり。

 組み上がったので調整にはいる。

 弦を張り、弦高とオクターブとネックの調整。これをざっくりやってから、ナットを調整するという手順だ。

 通常のテレキャスターだと、ブリッジのサドルは3ウェイと呼ばれる、2弦共通のもの。これだと、正確なオクターブ調整が難しい。じゃ、ストラトキャスターみたいに、各弦独立で調整できるようにすりゃいいじゃんと思うでしょう。実際、6ウェイという各弦独立のサドルになってるブリッジも売っている。しかしながら、この3ウェイのサドルのRが大きいことが、テレキャスターのキャラクターに寄与していると言われている。Rの小さい6ウェイと音の立ち上がりが違うんだそうだ。その両立を目指したのがこのブリッジ。ウィルキンソン製で、サドルが傾くことでオクターブが調整できるようになっている。まあ、調整はちょっとめんどくさい。はい。こんなもんかな。弦高はちょっと低めで。ネックの仕込みはこのままで良さそうだ。

 で、ナットの状態を見る。ものは、グラフテックのBLACK TUSQ XLってやつ。幅は、仮組みの時に調整してある。んー。これでいいんじゃないか。思ったより低くて、1弦はちょっと低いカンジ。ああよかった。瞬間接着剤をちびっと塗って固定。

 次にストリングガイドの取付。ネットの評判を見て、ダイナガイドというのにしてみた。これ、ガイドが動くことでチューニングを安定させるという仕組みだ。しかしながら、これで千円はないだろうという構造。百均レベルがそれ以下だよ。逆に言えば、こういうのを発案できれば儲かるって事だな。

 最後にピックアップの高さ調整。リアを高めにして、その後フロントとのバランスを取るという手順。んー。6弦の音がでかいね。リアはこんなもんかな。意外と音量があるカンジ。次にフロント。やっぱり6弦がでかい。こんなもんかな。はい完成。バランスが今ひとつなカンジ。

 では弾いてみましょう。リアは、フツーにロックとかグランジとかいけるね。ハーフトーンは今ひとつかな。フロントでえーとえーとなんちゃてジャズ。うーん。弾けない。

 弾き込んでいけば、バランスも変わってくるかもね。

 また練習を再開せねば。

Original Telecaster(オリジナル テレキャスター)
 ボディ:       トップ:レッドウッド バック:アルダー1P
 ネック:       メイプル ローズウッド指版
 ペグ:        ゴトー クルーソンタイプ
 ストリングガイド:  ダイナガイド
 ナット:       グラフテック BLACK TUSQ SL PT-5000
 ブリッジ:      ウィルキンソン WT3
 ピックアップ:    フロント:ダンカン・ジャズ SH-2n リア: フェンダー
 コンデンサー:    オレンジドロップ
 ノブ:        アルミ 62タイプ

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Last Update : 2022/06/12