日程:
02年12月14日(土)
場所:
NHKホール(渋谷)
メンバー:
矢野顕子(vo,pf,key,vib), 佐橋佳幸(g,vo,mandolin), アンソニー・ジャクソン(b), クリフ・アーモンド(ds,g)
渋谷の街はクリスマス一色。人がすごくて、NHKホールへとたどり着くのに随分時間がかかった。
この「さとがえるコンサート」と銘打たれたイベントは毎年の恒例となっているそうで、現在は活動の拠点をニューヨークに移している矢野顕子が、このメンバーで継続しているコンサートだ。聴衆の年代はかなりばらばらで、渋谷を歩いている人をそのまま詰め込んだ感じだ。季節柄か(違うか)カップルが多い。
メンバーが登場し、ステージは「東京は夜の7時」でスタート。ピアノの音が柔らかくて気持ちいい。佐橋の奏でる12弦のアコギもきれいだ。
かなり音量が小さいコンサートだ。ピアノをきれいに響かせることを重視しているのだろう。ドラムはかなりばさばさしたいかにも今風の音なので、ちょっと意外だった。クリフといえば、どフュージョン、ドンドン系のイメージだ。また、アコギは非常にきれいで、ピアノとのコンビネーションが秀逸だ。しかしながら、エレキの高域はややきつい。
随所で矢野顕子によるビブラフォンがフィーチャーされた。ソロのコーナー以外では、ほとんどヘッドセットのマイクを使っていたが、フツーのダイナミックマイクと音質がほとんど変わらないのがすごい。ベースはボリュームペダルの操作が絶妙だ。タッチも素晴らしく、さすがアンソニーだ。彼の音価のコントロールは絶品で、スペースの作り方がうまい。ドラムは非常にオーソドックス。歌を生かす演奏なのだろう。随所でみせるラテンフレーズに、少しだけクリフらしさがうかがえる。
去年までの「さとがえるコンサート」との大きな違いは、ギターの佐橋の加入だが、彼が加わることによってアンサンブルの自由度が増え、パフォーマンスが大きく向上したと友人は語っていた。特に、ドラムの手数はかなり減ったそうで、今回の方がシンプルで良いということだ。スペースを埋めるドラミングが不要になったということだろうか。佐橋のアコギの演奏は気持ちよかった。
ピアノとベースのデュオで始まった「青い山脈」では、アンソニーがソロをとる。アルペジオを主体に、6弦をフルに使う。パイプオルガンが共振するのがやや気になる。こういったジャパニーズ・トラディショナル・ソングの、彼女によるリハーモナイズやリズムアレンジはかなり楽しい。最初に彼女の名前を聞いたのは、彼女のファーストアルバムに収録されている「丘を越えて」なのだが、なんじゃこりゃとぶっ飛んだ記憶がある。そこからソロのコーナーにはいり、「忌野顕子」というユニットでも演奏された「多摩蘭坂」では、ソロから入ってアンソニーが途中からからむ。
ドラムのクリフ・アーモンドは、デビュー時にはかなり注目されていたが、当時人気絶頂のデイブ・ウェックルにスタイルが似ていることから、ウェックル・クローンというありがたくないレッテルが貼られ、参加しているアルバムは非常に少ない。実際のところ、ピアニスト、ミッシェル・カミロでの演奏は、前任であるウェックルと聞き分けがつかないほどだ。しかしながら、その色は薄められ、グルーブ・ドラマーっぽい演奏であった。似ているハナシで恐縮だが、今回の演奏は日本のグルーブ・ドラマー第一人者である江口信夫と、かなり共通点がある。音色や、フォームも結構似ているのはなぜだろう。
ハワイコーナーでは、ベンチャーズの「Walk, Don't Run」が演奏され、続いて娘の坂本美雨が登場し、最近リリースされた母娘デュオの「くまんばちがとんできた」が披露された。しかしながら、坂本の歌はおせじにもうまいとはいえない。
ここのところ、懐メロ系バンドを見ていたせいか、音楽が生きているように感じられる。メンバー全員で音楽を作っている感じが出ていて、好感が持てる。各自テクニシャンだけに、楽器のコントロールも素晴らしい。もちろん楽曲の良さやアレンジも重要なのだが、それを生かすことができる技術が不可欠だなと痛感した。そういったことを含め、ここ数年でも片手にはいる出来のコンサートだと思う。
ラストは「春咲小紅」で、アンコールは「Happiest Drummer」「ひとつだけ」。アンコールの拍手が整然としているのが客層をあらわしているだろう。
久々に立ち上がることのないコンサートだった。
セットリスト
東京は夜の7時
いないと
GREENFIELDS
自転車でおいで
ねこがかくしているもの
青い山脈(ベースとデュオ)
遠い町で(ソロ)
ニットキャップマン(ソロ)
多摩蘭坂(ソロ〜デュオ)
ほんとだね。
にぎりめしとえりまき
You Are What You Eat
Let's Hawai'i
Walk, Don't Run
くまんばちがとんできた(+坂本美雨)
Money Song
げんこつやまのおにぎりさま
春咲小紅
encore
Happiest Drummer
ひとつだけ
楽器のコーナー
矢野顕子:
スタインウェイのコンサートピアノ 音は柔らかくて気持ちよかった。
左手の2段、下はローズのステージピアノの足無し。
上はヤマハのモチーフ オルガン、パッド、ホンモノのローズがあるのにローズの音、なんてのに使っていた。
ヤマハのビブラフォン
佐橋佳幸:
フェンダー・ストラトキャスター
アンプはフェンダー・スーパーリバーブかな。4発スピーカーのやつ。黒パネル。
6弦アコギ ブランドはわかりません。ヘッドには「O」だか「Q」だかみたいなロゴが入っていた。なんですか、これ?
12弦アコギ これまたブランドは不明
ラウンドマンドリン
アンソニー・ジャクソン:
フォデラ6弦 アンソニー・ジャクソン・シグネーチャー
コントラ・ベース・ギターと本人は呼んでいる。
本体にはボリュームやトーンは無く、すべて足元のアーニーボール・ボリュームペダル(私も持ってる)でコントロールしている。
アンプはナシ
病気をして一時はやせていたのだが、また元にもどってしまった。でぶでぶ。
クリフ・アーモンド:
ドラムはすべてヤマハだ。
たぶんメイプル・カスタム・アプソリュート 色は青
サイズは22,12,13,14,16かな。オールタム。
スネアはコパーの14×5 1/2 のボトムのみにウッドリムを付けた変わった仕様
スネアの音は、最初ばさばさしていたが後半良くなった。
サイドスネアはピーター・アースキン・シグネーチャーの10。
ジルジャン・シンバル トップのマイクが1本って珍しいな。
Mac Powerbook G4 は打ち込み用。けっこう使っていた。やっぱりマックだな。
有線のインナーイアー・モニターシステムを使用
1曲だけアコギを演奏。オベイション、黒のエリート。
ルックスがかっこいいな。昔のイメージと違う。