ライブ

05/4/22 Pat Metheny Group at 東京国際フォーラム

日程:
 05年4月22日(金)
会場:
 東京国際フォーラム(有楽町)
メンバー:
 Pat Metheny(g), Lyle Mays(key), Steve Rodby(b), Antonio Sanchez(ds), Cuong Vu(tp,perc,g,etc), Gregoire Maret (harm,vo,g,b,perc,etc), Nando Lauria (g, vo, perc, karimba,etc)


 「Speaking of Now」ツアーからもう2年半も経っている。しかし、生活に変化が無いな。

 今回のツアーは、新譜「The Way Up」の発表に伴うものだ。このアルバムは、かなり特異なつくりになっている。4つの楽章から成っており、ひとつのテーマをモチーフとしてメセニーの方法論をフルに投入して発展させている。それで70分という、前例のない構成を持った作品だ。メセニーはインタビューで、これを全体で1曲と考えていると言っている。このコンサートでは、これがまるまる再現されるらしい。

 会場にはいると、ミキサーのブースが客席中央に設置されているのが目に入る。なんと後ろは通路で、全く無防備な状態だ。係員もついていない。通りすがりのヒトが触ろうと思えば、わけもない。ひとしきり眺めてきたが、メセニーのコンサートじゃなければ、何かされていてもおかしくない。

 席はミキサーの斜め右後方だ。客層はちょっと品がよい目だ。年齢層は意外とばらけてはいるが、やはり高い。平均すると30後半くらいか。また男女比は8:2くらいだ。

 会場には「The Way Up」で使われているシーケンスが、うっすらと流れている。例によって客電が落ちない中、スポットが点いた。メセニーの登場だ。ガットギターのソロによる「This Is Not America」でコンサートは始まった。「The Falcon And The Snowman」(邦題:コードネームはファルコン)という、若き日のショーン・ペンが出演している映画のサントラに収められているこの曲は、昨今のアメリカの政策に対するアンチ・メッセージとなっているらしい。前回と同様にギターソロ向けに大きくアレンジされている。そのまま「The Way Up」のテーマが奏でられるとメンバーが客席から登場する。

 前方中央にメセニー、右にサンチェス、左にメイズ、後方は一段上がって左から、ロドビー、マレット、ヴー、ローリアだ。メンバーが位置につくと客電が落ちる。

 ここから約1時間、ノンストップで緊張感あふれる演奏が展開された。素晴らしい完成度だ。上段の3名は、とっかえひっかえいろいろな楽器を演奏する。アルバムを再現するに当たり、お、キミ手が空いてるね、これ弾いて、ってな風にヘッドアレンジした、というところだろうか。メセニーも各種ギターを弾き分ける。フォローするスタッフも大変だ。

 サンチェスの演奏はカタイ。しかし、堅実ではあるもののちょっと色気に欠けるか。どこかでサンチェスはガッドに似ていると書かれているのを目にしたことがあるが、2人のスタイルは全然違う。なにをアホなと思ったのだが、この「カタイ」ところは似ているかも知れない。「The Way Up」で見せたような、メセニーの思い通りの世界を実現する、という点ではポール・ワーティコより彼らの方が適しているのだろう。

 途中でメセニーはシールドを踏み抜く。サンチェスはシェケレ(直径30cmくらいある)を使った後、スタッフに3mのバックパスを決め、ドラムにスイッチする。

 「The Way Up」が終わると、観客はスタンディング・オベイションで答える。拍手が鳴りやまない。メセニーのMCが入るとようやく静かになる。コンサート後半の選曲に悩んだということをインタービューでも言っていたが、「いろいろなフォーマットで演奏する」ということで後半に突入する。

 まずはドラムとのデュオで「(Go) Get It」だ。サンチェスは粒立ちのいいスティックワークで、いい意味でもわるい意味でもタイト。「Trio 99→00」ではビル・スチュワートが演奏しているが、こちらがルーズに感じられてしまう。この後は意外と古めの曲をもってきている。「First Circle」が無かったのも意外だ。トリオで演奏された「James」はS.I.A.トリオでも演奏していた初期の名曲だが、ずっと柔らかな雰囲気を持った暖かい演奏だった。「Lone Jack」はフォーマットを借りたという感じで、前半と打って変わって肩の力が抜けた演奏だ。シーケンスを使う「Are You Going With Me?」などでは、ミキサー席でLEDがテンポに合わせて点滅している。

 今回は各メンバーのソロが少なめか。メセニーのギターの音が出ず、やっと始まった「Always and Forever」では、マレットがマウス・ハープのソロを聞かせる。メイズのソロから、しっとりした「Farmer's Trust」へ。ラストは定番の「Minuano」だ。マリンバ・デュオからスネアのロール、そしてブラスからパンフルートの上行フレーズが入ってサビってのが、いつもながらむちゃむちゃかっこいい。鳥肌が立つ。メセニーはうなずきながら観客席全体を見回す。アンコールも定番の「Song For Bilbao」だ。約3時間、相変わらず密度の濃いコンサートであった。

 しかしながら、やはり前半はちょっと冗長か。野心作「The Way Up」はそれなりに評価できるが、途中で意識が遠のきそうにもなった。PMGとしては方法論が完成してしまったという感もあり、若干のマンネリも感じられる。コンサートとしては、前回のように、非PMGフォーマットの曲の見せ場がもっと欲しい。

Set List
 This Is Not America
 The Way Up
 (Go) Get It
 James
 Lone Jack
  Picaso Guitar Solo〜
 Are You Going With Me?
 Last Train Home
 The Roots of Coincidence
 Always and Forever
  Piano Solo〜
 Farmer's Trust
 Minuano
encore
 Song For Bilbao

楽器のコーナー

Pat Metheny
・Ibanez PM-20 フルアコ。メセニーのシグネーチャーモデルで、現在生産中止。シングルカッタウェイの1ピックアップ。カタログモデルのPM-100でもPM-120でもない。営業上の問題は無いのか。
・Ibanez ミニ PM-20 初登場か?スケールは3/4くらい。スタンドに固定されて使用された。前回はLinda Manzerのミニギターが使われたが、これと一緒ならチューニングは5度上だ。
・Ibanez Artist 12弦 スタンドに固定。メセニーのスライドって初めて見た。
・Roland G-303 ギターシンセが2本。アーム付きでヘッドの長いカスタムメイドがほとんどで使用され、シンクラビアのコントロールをむりやり埋め込んだものは、ディストーション・ギターとして「The Roots of Coincidence」のみで使われた。
・Linda Manzer エレアコ。スチール弦でシングルカッタウェイ。
・Guild エレアコ。スチール弦でシングルカッタウェイ。
・Linda Manzer エレアコ。ガット弦でシングルカッタウェイ。
・Linda Manzer ピカソギター。41弦。(画像↑)

Lyle Mays
・スタインウェイのグランドピアノ。MIDI化されている。
・その上にKORG TRITON
・もう1台、KORG TRITONが左上
・今回も「The Roots of Coincidence」ではエレキを弾いた。モノは相変わらず不明。

Steve Rodby
・アコベ アルコのソロもあった。
・4弦のフレットレスとフレッテッドはフォデラ。フレッテッドは「The Roots of Coincidence」のみ。

Antonio Sanchez
・ヤマハ メイプルカスタム・アブソリュート・ヌーヴォー。20TT,10,12TT(浅胴),14,16FT。スネアも同シリーズの5インチ。色はすべてチェリー・ウッドと、私と同じ。(^^)
・ジルジャン・シンバル かなりの枚数を、かなり水平にセッティング。結構音色が似ているな。こんなにいっぱい並べなくてもいいカンジ。
・左足クラーベ用カウベル その他パーカッション類
・ワイヤレスのインナーイアー・モニターを使用。ドラムなんだからワイヤレスでなくてもと思うけど、これだけ出入りが激しいとワイヤレスかな。
・ベースもちょこっと弾いた。人使いが荒いグループだ。
・基本に忠実なドラムだ。

Cuong Vu
・ギターはLINE6のVariax。なんでこんなものを。ま、ストラトとかレスポールでないのがPMGらしい。

Gregoire Maret
・ギターはRoland G-505だよ。なんでこんなものを。ディーン・ブラウンがずっと使っていたことで有名。友人が持っていたが、できはイマイチらしい。
・しかし、いろんな楽器を弾いてたね。

Nando Lauria
・アコギでスライドやってたね。

 「The Falcon And The Snowman」(邦題:コードネームはファルコン)の映画はVHSで持ってます。

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Last Update : 2005/04/25