ライブ

05/5/8 Chick Corea Elektric Band at 日比谷野外音楽堂

日程:
 05年5月8日(日)
会場:
 日比谷野外音楽堂
メンバー:
 Chick Corea(key), Frank Gambale(g), Eric Marienthal(as,ss), Ric Fierabracci(b), Dave Weckl(ds)

 まずは、チック・コリア・エレクトリック・バンド(以下EB)について解説しよう。チック・コリアについてはこちらデイブ・ウェックルについてはこちらフランク・ギャンバレについてはこちらも参照下さい。

 このバンドの魅力は以下だ。

1) ディストーション・ギター、エレクトリック6弦ベース、サックスを活用したチック独特のハーモナイズによるテーマ提示
2) 斬新かつ無謀なリズムアレンジ

 もともとは、チックがジョン・パティトゥッチ(b)、デイブとのトリオでアイデアを練っていたものが原型になっている。これは後に発表された「Live from Elario's」(85年録音)というアルバムで聞ける。完成型になったのが86年に発表された「The Chick Corea Elektric Band」だ。このアルバムは素晴らしい。曲がいいし、ジョン・デイブのリズム体が強力だ。冒頭の「City Gate」「Rumble」で完全にノックアウトされてしまった。本作がEBの処女作にして最高峰だろう。続く「Light Years」ではファンクになってしまい、リズムアレンジの魅力が薄れる。あららとは思ったものの、出来はまずまずか。「Eye of the Beholder」ではアコースティック・ピアノへ傾斜したチックのソロアルバムといった作りになっており、バンド感が無くなってしまった。次の「Inside Out」で1st方向に若干戻り、これは結構お気に入り。しかし「Beneath the Mask」はまたまたファンク。メンバーを大幅に変更した「Paint the World(Chick Corea Elektric Band II)」(93年)で幕を閉じる。そして04年になぜか「To the Stars」という、全盛期のメンバーによるアルバムで復活した。

 今回のツアーは「To the Stars」のリリースに伴うもの、にしては遅いな。レコーディングには参加したジョン・パティトゥッチであるが、残念ながらツアーには同行していない。前回、EBを見たのは、90年くらいの中野サンプラザだ。前から3列目だったんだよね。興奮しまくった記憶がある。あの感動をもう一度得られるのか?

 なんで野音なんだろね。天気は曇りで、へたすると降りそう。さらに、ちょっと寒い。会場の男女比は8:2くらいか。年齢層は高い。ま、そうだろね。でも、若いコもいなくはない。後ろの席には大学1年(会話から判断)の男のコが2人、右隣も両親に連れられた20代の女のコだ。親子でチック。はい。とりあえずステージ前で楽器チェック。あれ、双眼鏡持参ってほとんどいないよ。

 BGMは流れていない。5時45分、まだ周囲が明るい中ステージの照明が点き、メンバーが登場する。今日は2部構成でまずは「To the Stars」の曲を演奏する、とチックが話し、アルバム1曲目の「Check Blast」が始まる。ここからは新譜の頭から順に演奏される。

 音はまずまず。リズム体のバランスがちょっとでかい。ベースはかなりトレブリーだ。しかしながら分離が意外と良好で、各楽器はそれぞれ良く通る。

 チックとフランクは前回のEBから50%増量されている。さらに、フランクはスキンヘッド。エリックとデイブは体型を保ってはいるモノの、月日の流れを感じさせずにはいられない。

 新作の作曲技法は、EBの基本ともいえるもので、前述の1),2)を踏襲している。とはいえ、ちょっとネタ切れ感はある。ハーモナイズはオリジンでもずいぶんやっちゃったし、リズムの仕掛けも新味に欠ける。テーマの後は各人のソロだ。ま、ここは第一人者だけあってみんな素晴らしい。エリックがブロウする。フランクが派手にスイープを決める。デイブがはじける。デイブ様はあんだけ手数を出しておいて、よくパルスが失われないよね。ワタクシはそこそこウェックル・フリークなのだが、一番好きなのは、このパルスだ。ベースもなかなかタイトでソロもそこそこいい。しかしながら、ちょっと飽きるね。どの曲もフロント3人すべて、たまにリズム体というソロ回しだ。もう少し違ったフォーマットにならないのか。

 前半は約70分。20分の休憩の後に期待の後半に入る。聞きたいあの曲この曲。期待がふくらむ。失礼ながら、懐メロバンドの扱いにしてしまっているね。そしてチックが、むかしむかしの曲をやるとMCする。わーい。15年前に来たヒトはいるかな。はいはいはい。かなり冷え込んできたが、場内の熱気は高まる。しかーし、紹介されたのは・・・「Eye of the Beholder」に収められている「Trance Dance」・・・だ。ソロが長いなー。そして「Eternal Child」だ・・・。ソロが長いなー。「CTA」だ・・・。ソロが長いなー。デイブ様のソロも、今日は短くして欲しいと思った。この3曲で1時間。え、これで終わり??? アンコールは・・・「Spain」だ。おいおい。EBの曲じゃないって。このバンドで聞きたいとは思わないっての。せめてラストは「City Gate」「Rumble」ですよね? まだそこに置いてあるKX-5(ショルダーキーボード)を使ってないし。え、「Blue Miles」? ということで、むかしむかしの曲とは「Eye of the Beholder」(3rd)と「Paint the World」(6th)に収められた曲と「Spain」だった。

 それはないでしょう。

 チックが「Eye of the Beholder」を気に入ってるのはわからないでもないし、みんな売れっ子でリハの時間も取れないのはわかる。けど、旧EBの曲がたった4曲。それも3rdと6th。みんな「The Chick Corea Elektric Band」(1st)の曲を聴きたいでしょ。「King Cockroach」とか。それとも「Got A Match?」のテーマが弾けないのか?

 演奏は素晴らしい。でも選曲はがっかり。もう行かない。と、言いつつ、またチケットを買っちゃうんだろうな。

Set List
1st
 Check Blast
 Mistress Luck - A Portrait
 Mistress Luck - The Party
 Johnny's Landing
 Alan Corday
 The Long Passage
 ?
2nd
 Trance Dance
 Eternal Child
 CTA
encore
 Spain
 Blue Miles

楽器のコーナー

Chick Corea
 奥にヤマハのMIDIグランドピアノ。
 手前右下がローズ・ステージピアノ+特注の低い足。その上にヤマハのモチーフ8。
 ヤマハのKX-5は使われずじまい。(--;) ぶーぶー。
 リング・モジュレータをやたら使っていた。気に入ったのかな。
 ま、なんだかんだ言ってもかっこいいね。

Dave Weckl
 ヤマハ メイプルカスタム。サイズは、22,18BD,10,12,14,16TTだ。ここんとこずっとこれ。なお、18BDは右足の所からリモートで叩く。カラーはヴィンテージ・ナチュラル。こいつが出た当時は、ラッカー仕上げの「メイプルカスタム」とヴィンテージ・ナチュラル(特殊樹脂塗料)の「メイプルカスタム・ヴィンテージ」は別シリーズで、ヴィンテージの方が高かった。しかし、今は同じシリーズの色違いという扱いになっており、値段も同じ。昔買ったヒトは怒るね。ウェックルはアブソリュート・ヌーボーには移行しないのかな。
 スネアはもちろん新デイブ・ウェックル・シグネーチャー。メインがMSD14ADW(メイプル 14×5.5)で向かって右のサブがMSD13ADW(同 13×5.5)。
 向かって右にボンゴをセット。昔は電気(Roland PAD8)だったよね。当時からボンゴの音は多用していた。
 セイビアン・シンバル こちらに一覧が有る。ほとんどがデイブがプロデュースするHHX evolutionというシリーズだ。しかし、ずいぶんセッティングが低くなったね。
 ペダルはヤマハのDFP9310で、ベルトドライブにしてきた。やはり時代はベルトだ。(ウソ)
 スティックはVic Firthのシグネーチャー。これは2種類あって、evolutionの方を使用。他にRUTEってのも使っていた。Pro-markで言うとHot Rodsで、竹ひごを束ねたようなモノ。小音量演奏用だ。

Ric Fierabracci
 Laurusの5弦。初めて聞いたブランドだ。かなりブライトなセッティング。
 アンプは謎のプリとクラウンのパワー。
 キャビはバグ・エンド。12インチくらいかなの3発入り。

Frank Gambale
 ヤマハのAES-FG。白。フランクのシグネーチャーだ。しかし、現在生産中止。
 ヤマハのスチール弦エレアコ。意外にもカッタウェイ無しで12フレットジョイントのスロッテッド・ヘッド。ダイナミック・ギターかい。
 T.C.Electronicsのマルチにクラウンのパワーアンプ。ブギーじゃないのか。

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Last Update : 2005/05/09