ライブ

05/10/22 山中千尋 at 品川 ステラ・ボール

日程:
 2005年10月22日(土)
場所:
 品川 ステラ・ボール
メンバー:
 山中千尋(p), Robert Hurst(b), Damion Reid(ds)

 山中千尋(以下敬称略)は群馬県桐生市出身、日本美人ジャズピアニストカテゴリーのひとりだ。同カテゴリーには木住野佳子、上原ひろみなどがいる。このクラスは、もう小さいライブハウスでは入りきらないのか、会場がホールになってしまう。それがいっぱいになるんだから大したものだ。

 今回のツアーは、メジャーレーベルに移籍しての第一弾アルバム、「Outside By The Swing」のリリースに伴うものだ。編成はトリオで、リズム体はアルバムのレコーディングと同じく、ジェフ・ワッツとロバート・ハースト。好きなジャズドラマーはと聞かれると、ジェフ・ワッツと答えることが多いのだが、生で見たことがない。で、ロバート・ハーストでしょ。あのウィントン・マルサリスのリズム体だ。てなわけで行ってみた。

 しかーし、ジェフ・ワッツは身内の不幸があったそうで日本に来なかった。19日の大阪では外山明さんが叩いたらしい。東京はどうなるのか。

 チケットを買ったのが遅かったので、席はほぼ中央ながら最後列。それでも10列目だ。会場のキャパは500くらいか。年齢層は広く、おじさんおばさん、おじいさんおばあさんも多い。右方にははげおやじと30オンナのカップル。男女比はほぼ半々くらい。言えるのは、みんな地味。若いコも地味。やはりジャズファンは地味。ああ地味。

 定刻にメンバーが登場する。まずMCが入るという珍しいパターンだ。そこでメンバーが紹介されるが、このドラムは誰? 1曲目は新譜からきめきめテーマの「Living Without Friday」だ。ダミアン(ダミオン?デミアン?)は二日前に来日し、20日の富山公演が初の顔合わせ。それほどリハもやってないのだろうが、譜面を見つつも完璧に合わせる。

 山中の曲は、現代ジャズ風のリズムの仕掛けが多いテーマを持っているが、コード進行は比較的平易で、ソロはオーソドックスなスタイルだ。そのソロはちょっとタッチが弱いカンジがするが、ま、ま、それなり。リズム体はというと、このダミアンがかなーり現代風。古典フレーズを使わないしオフビートをあまり感じさせないフラットなレガートだ。で、リズムはかなり前。ぐわしゃーっと切り込む感じでレガートを切る。また、左リードなんだよね。ドラムは右利き用のセッティングだが、左利きのようでブラシは右がレギュラーグリップだ。ジャズで左リードって、あんまり見たこと無いんだけど、右手のスネアからタムへの移動がかなりおもしろい。メリットはあるかも。シングルストーロークを多用するが、これが早いし移動がスムーズ。そして、リズムの揺れはみじんもない。音に関してだが、ヘッドはコーテッドでチューニングが低くばさばさしてる。まあ、おもしろいドラムだった。ベースは音響のせいかあまり良く聞こえない。とはいえ、リズム体は安定している。

 ホールの音響はベースを除けばまずまず。ピアノはクリアによく聞こえた。でも、あんまり音の良さそうな会場じゃないな。LMはつらそう。

 ステージは、新譜からの曲がほとんどだ。「クレオパトラの夢」をやるまえに、あまりこの曲は好きではないというようなことを言っていた。こいつや「All The Things You Are」はレコード会社の要望か。「クレオパトラの夢」のソロで「学生時代」をリハモして使っているのがヘンだ。レパートリーにはカバー曲も多く、「やつらの足音のバラード(Ballad For Their Footsteps)」(はじめ人間ギャートルズのエンディングテーマ)から「Three Views of a Secret」へのメドレーが美しい。2ステのラストに演奏された「八木節」のアレンジはちょっとなと思うが。

 ピアノトリオというと、各曲でベースとドラムがソロを取りそうだが、1ステ1回ずつと最小限にとどめられていた。ダミアンのソロはいわゆる現代型。ロバートはアルコのソロも披露した。いわゆるバースが無かったのが意外だ。フツーはやるもんね。これはコンセプトなのだろうか。

 アンコールは「Take Five」で、テーマのリズムをちょっとアレンジして演奏された。2度目のアンコールはメロディオン(ピアニカ)を使って「Candy」。CDでは4バースが入っているが、これも無かった。

 山中の曲は割と好きだ。いいメロディーを書くと思う。しかしながら、ソロはもひとつか。現代じゃずーなリズム体に乗っかって、ま、弾いてます、というカンジ。インタープレイ感が低く、対話が感じられない。ロバートは、はい、ちゃんと見てますよという監督者のフンイキ。実際、彼はミシガン大の主任教授だそうな。ちなみに、山中はバークリーを主席で卒業しているらしい。

 山中は先日放映された「英語でしゃべらナイト」に出ていたのだが、英語を話すようになってフレーズが変わったと言っていた。やはりジャズは英語だと。であれば、もう少し力強い英語を話して欲しいところだ。

 ところで、山中千尋ってどこに住んでるの?
 
Set List
1st
 Living Without Friday
 Teared Diary
 In A Mellow Tone
 Matsuribayashi/Happy Go Lucky Local
 I Will Wait
 Impulsive
2nd
 Hackensack
 Cleopatra's Dream / School Days
 Ballad For Their Footsteps / Three Views of a Secret
 Outside By The Swing
 He's Got The Whole World In His Hands
 All The Things You Are
 Yagibushi
encore
 Take Five
 Candy

楽器のコーナー

Damion Reid:
 SONOR DESIGNER 18BD, 10,12TT, 14FTくらい。
 12,14,18が白で10(12かも)がなぜか青。セットはおそらくレンタルなので、ジェフ用に用意した3点にダミオンの要望でタムを追加したのかも。ピッチは比較的低め。
 スネアはNoble & ColeyのJB145。14x5でメイプル単板レインフォース有り。ばさばさした音だ。
 シンバルは不明。ドラマーから見て左から、22ライド、18クラッシュ、20ライド、18クラッシュくらいかな。左リードでほとんどのレガートは左。でも、右手でも切る。左のライドはピッチが低めで、右は高め。
 リズムがほんとタイト。全然揺れない。かつレガートのオンとオフがフラットなんだよね。山中との取り合わせだと、ジェフ・ワッツくらいの方がいいんじゃないか。上原ひろみのドラムもヘンだよね。粒立ちが良すぎる。フレージング。こういうのがはやりか?

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Last Update : 2005/10/25