ライブ

06/6/17 椎名豊 3 at 岩本町 TUC

日程:
 2006年6月17日(土)
場所:
 岩本町 TUC

メンバー:
 椎名豊(p), Rodney Whitaker(b), Greg Hutchinson (Gregory Hutchinson) (ds)

 グレッグ・ハッチンソンは最近のフェイバリット・ドラマーだ。渋谷ヤマハでのセミナーに参加し、こりゃ行かねばってことでライブも行ってきた。

 TUCは初めて。ちょっとわかりづらいとこにある。10分前に行くと、すでに30人くらいの列が出来ていた。意外と年配の方が多い。ジャズのライブハウスって、割と若いヒトが多いでしょ。会場内も若い層とシニアに2分され、40〜50代のいわゆる中年がほとんどいない。純粋に椎名(敬称略)の音楽を楽しむシニアとグレッグファンの若年層、というフンイキが漂う。ライブ中も、グレッグに視線が集まってたもんね。

 セミナーではグレッグに向かって右だったので、ちょっと左寄りに席をゲットした。

 椎名が登場し、メンバーを紹介する。1stセットはチャールズ・ミンガスの「II BS」で始まった。

 とにかくリズム体がソリッド。前ノリでの一体感が素晴らしい。特にテンポの速い曲では、On Top感がすさまじい。前に前にパルスが出ている。なのに走らないし、ピアノがまた後方でちょっとルーズなカンジで弾くんだよね。この、なんかカッコいいきもわるい感がたまらない。フレーズはオーソドックスで、現代ドラマーとちょっと違う。椎名もMCで言っていたが、どこにアクセントが来るかわからない。それでいて、パルスが非常に強い。また、バラードも美しい。マレット、ブラシを駆使し、広がりを出している。

 休憩に入り、2ndセットから参加の友人が来た。グレッグは客席後方でビールを飲みながら、女性と話している。その友人がその光景を見て、あれがグレッグ? 話してみたら? というので、女性が離れていったのを見て話しかけた。今回のレポはこのインタビューをメインにしよう。しかーし、心の準備も無いまま突入したので、超ブロークンな英語になってしまった。なので、グレッグはゆっくりとわかりやすい言葉を選んで話してくれた。それがちょっとくやしい。とはいえ、ドラマー以外には全然役に立たない内容だ。

 2ndセットでは広瀬潤次の飛び入りもあった。やはり、かなりフィールが違う。ラストはセミナーでもやった椎名オリジナルの「ムービン・フォース」。またまた派手なドラムソロを決め、アンコールはブルースだ。

 かっこいいね。ホント。いい演奏だった。

 店から出ると外は雨。ビニール傘を求め、コンビニへと走るのだった。

Set List

1st
 II BS
 Summer Mist
 Evidence
 In The Dusc
 Tuck Away
2nd
 Bitter Sweet
 River
 I'm Confessin'
 Warm Welcome (featuring 広瀬潤次)
 薔薇のひとひら(The Single Petal of a Rose as piano solo)
 Movin' Force
encore
 In Walked Bad

楽器のコーナー
 セットはYAMAHA Maple Custom Absolute Nouveau 18BD,12TT,14FT 店のか、借り物か。
 フロアがかなり傾いてるね。
 スネアをチェックし忘れている・・・。
 シンバルは、Zildjian K Custom Dry Complex Ride 22、Zildjian Prototype 20(インタビューを参照)、K Custom Special Dry Crash 16。ハイハットは正体不明のオールドで、とある楽器屋で見つけたのだが、「店のヤツはビンテージだと知らなかったので普通の値段で買った」ということだ。

 確かに、前から見ると右手はルーズかな。しかし、モーラーとか無縁のオーソドックスなフレンチだ。手首をかなり使う。特に左のライドでレガートを切るときは。最近、こんなカンジのヒトは少ない。やっぱり、スッティッキングはいろいろな手法を練習した方がいいのかも。
 いきなり1曲目冒頭でなぜかスティックを交換した。こともなげに左手を使って右のライドでレガートを切りながら、右手で交換したんだよね。フィールが全然変わらない。なにげにすごいな。
 マレットの使い方がうまい。「Summer Mist」ほぼ全編を右スティック、左マレットで演奏した。マレットでクローズ・リムショットなんて、初めて見た。
 ベースソロのバックアップで、ハイハットのチキチー(なんて言うんだろ)をほとんどやらない。ライドかブラシ。ライドをコントロールしきってるね。
 とにかく、ダイナミクスの幅が大きく、フィールが安定している。たしかに、右のライドでの音色コントロールは多彩だ。
 今回のブラシはラディック製、ピンクのラバーのやつ。なんでかな。
 「Evidence」では、椎名さんがバースでリズムを見失った。
 広瀬さんのほうがスネアの粒立ちがはっきりしている。グレッグはルーズで、ピッチも低く感じるんだよね。そこのフィールが一番違う。全体に広瀬さんの方が明るくクリアで、グレッグはダーク。レガートも広瀬さんの方がストレートでスインギー。なのにグレッグの方がパルスが強い。

グレッグ・ハッチンソン単独インタビュー

私:あなたの演奏に大変感動しました。
グレッグ・ハッチンソン(以下グ):どうもありがとう。
私:質問してもよろしいでしょうか。シズル(リベット)の打ち方についてコツがあったら教えて頂けませんか。
グ:えーと、どんなシンバルかな。
私:あなたと同じ(Kジルジャン・カスタム・ドライ)コンプレックス・ライドを買おうと思っているんです。
グ:ああ、でも、私のは非常に特別なんだ。ジルジャンの工場に行って・・・
私:選んだのですね。
グ:いや、工場で、ハンマー(叩くフリ)・・・、ハンマー(叩くフリ)・・・、ハンマー(叩くフリ)・・・、ってやって、作ってもらったんだ。だから、オールドのK(ジルジャン)を買うといいよ。友達のクラレンス・ペンは多くのオールド・シンバルを持っている。彼はコレクターなんだ。私もいくつか持っている。で、いろいろなのを叩いて、フィーリングに合うのを選ぶといいよ。
私:日本では、オールド・シンバルは少なくて、置いてある店もほとんど無いんです。
グ:そうか。では、eBay(オークション)はどうだ。でも、それだと叩けないからな。それならば、インスタンブールのシンバルがいいよ。
私:あなたはジルジャンのエンドーサーなのに、イスタンブールを薦めるのですね。
グ:あはは。でも、イスタンブールはなかなかいいよ。オールドのKに近い。それから、スピッツ(spizz)もいいよ。でも、オールドKがいいね。まあ、もしもコンプレックス・ライドを買うのなら、いっぱいある店に行っていっぱい叩いた方がいいよ。
私:そうですか。(ちなみに日本ではカタログ落ち)
グ:で、シズルだったね。私は、あのシンバルを手に入れてから、ずっとリベットは打っていなかったんだ。そして、使っている内に1本打って、使って、打って、という具合で、今は4本打ってあるんだ。
私:近くに並んでますよね。
グ:そう。分散して打つとシーン(と広がる)で、まとめて打つと硬い(stiff? stick?)感じになる。
私:左側のプロトタイプとスタンプしてあるシンバルは、どんなものなのですか。
グ:あれはジルジャンに、オールドAに似た感じでとリクエストして、特別に作ってもらったものなんだ。
私:ちょっとピッチが高いですよね。
グ:そうだね。で、あっちは最初はリベットが打ってあったんだけど、取り去ってしまった。
私:どんなシンバルに近いですか。
グ:それは、オールド、それとも新品。
私:新品だと。
グ:うーん。(Kジルジャン)コンスタンチノープルかな。
私:厚さはどのくらいですか。
グ:うーん、ミディアム。ミディアム・ライトだな。
私:コンプレックス・ライドはトラッシュ感がありますよね。
グ:そうなんだ。あの感じがオールドKに近いんだよ。また、叩き方によってカラーを変えることが出来る。とてもいいシンバルだ。
私:その左右2枚の(ライドシンバルの)コンビネーションが重要なのですか。
グ:いや、それよりも、叩き方によってサウンドをコントロールすることの方が重要だ。叩き方を変えることによって(叩くフリ)、いろいろなサウンドを生み出すことが出来る。(壁のポスターを指さして)あそこにいるパパ・ジョー(ジョーンズ)なんか、1枚のシンバルで本当に多彩なサウンドを作っている。そういう練習をした方がいい。
私:サウンドといえば、あなたの右手は思ったより握っているという印象があったのですが。
グ:いや、そんなことはないよ。(棒状のものを探すが見つからない)柔らかく握っているよ。ほら、ここのところで。(見せてくれた親指の第一関節が青くアザになっている。思ったより先から遠い)ここの筋肉(親指付け根の右側)をリラックスさせて。同じように、左手もリラックスして握るんだ。そして、手首もこんな風に柔らかく動かすのがポイントだ。
私:ところで、歌モノをやるときにシンバルは変えるのですか。
グ:いや、同じモノを使う。ただ、場合によってはフラット・ライドを使うけどね。たまにはオールドKとか。
(ここで時間切れ)
私:どうも親切にありがとうございました。
グ:いえ、どういたしまして。
私:次のステージを楽しみにしています。

 と、こうやってまとめると、それなりなカンジだが、かなりぎくしゃくした会話だった。英語も練習せねば。

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Last Update : 2006/06/17