日程:
99年6月2日(水)
場所:
東京国際フォーラム
メンバー:
Jeff Beck(g), Jennifer Batten(g), Steve Alexander(ds), Randy Hope-Taylor(b)
Beck is Back. 何度となく繰り返されてきたフレーズである。ヤードバーズを辞めて、スタジオで不本意な仕事をしていた彼が、第1期ベックグループを結成したとき。自動車事故から復帰して第2期ベックグループを結成したとき。BBAを解散した後、ブロウ・バイ・ブロウをチャートに送り込んだとき。そして新作をひっさげて10年ぶりに来日した今回。
彼はいったいどこに帰ってきたのだろうか。
席は2階の真ん中あたりだった。このホールの客席の傾斜はかなり急で、壁の造形もあいまってステージを見ていると地の底に吸い込まれそうである。客の年齢層は予想通り高く、茶髪なんて少数派だ。隣は1才くらいの子供を連れている。大丈夫かと思っていたら2〜3曲で退場した。
オープニングは新作「Who Else」の冒頭に納められている「What Mama Said」「Psyco Sam」だ。ベックのギターは遠いので識別が困難だが、おそらく白のベック・シグネーチャー・ストラトで、何本かのスペアがある。他にテレキャスターも使っていたが、たぶんお馴染みのダブルハムではない。ジェニファーのギターはなんだかわからないし、噂のタッピング時ミュートも全く確認できない。ベースは青のジャズベだ。帰りに宇都宮駅でGELMの鈴木さんに会ったが、彼も見に行っていたそうで、彼によるとベースはムーンだそうだ。ドラムセットは全く識別できない。
ステージは新作を中心に、間に懐かしの名曲をはさむという常套的手法であった。新曲ではシーケンスやSEが多用されている。やはり昔の曲の方が反応がいい。「Led Boots」からドラムソロ、そして「哀しみの恋人達」へとつなぐあたりが前半のクライマックスだ。ジェニファーはほとんどバッキングに徹している。ドラムはかなり手数が多く、テリー・ボジオより多いくらいだ。ツーバスフレーズを中心としたドラミングを展開した。ややうるさいかなの印象はあった。「The Pump」は意外な選曲だったが、ベックのお気に入りということだ。「You Never Know」でベースソロを披露、そして最後の曲「Blue Wind」での、「いとしのレイラ」のフレーズはご愛敬か。また、スタジオ版ではAメロ前にシーケンスフレーズがあるが、ジェニファーはこれをタッピングで決める。アンコールはまず「Where Were You」で、ジェニファーがギターシンセを効果的に使う。そして「Big Block」ではベックが2回目のサビの出をミスる。この曲でステージは幕を閉じた。
ベックのギターはかっこいい。アーミング、ボリューム・コントロール、スライドと、どれをとってもベックである。しかし、新作の方法論は、個人的にはあまり受け入れられなかった。会場から帰るときも周りで聞かれる感想は「良かった」よりも「あの頃は」であり、自分も少なからずそう思ってしまった。ベックはかつてアイドルであった。自分がエレクトリック・ギターを始めたのは、「Wired」にぶっ飛ばされたからである。高校の入学祝いを手に新宿の「KEY」に行って、グレコではあったが「Wired」のジャケットと同じ白のストラトを買ったのだ。ベックに対する思い入れは大きく、コンサートも前半はなんとなく悲しい気持ちが大きかったが、後半は楽しむことが出来た。さらに、こうしてコンサートから帰って新作を聞き直すと、まあ、それもありかなという気持ちになってくるから不思議なものだ。
ベックは帰ってきたのかな。
Set List(順不同)
What Mama Said
Psyco Sam
Brush with the Blues
Blast from the East
Space for the Papa
Angel
THX138
Even Odds
Declan
Savoy
Star Cycle
You Never Know 〜 Bass solo
The Pump
Led Boots 〜 Drums solo
Cause We've Ended as Lovers
Blue Wind
encore
Where Were You
Big Block
楽器のコーナー(あと情報)
ジェフ:
99年7月号のプレイヤーに、ジェフ・ベックのギターが載っていた。メインは白のジェフ・ベック・シグネーチャーだが、ピックアップはフツーのポールピースが出ているタイプで、かつ3シングルに変更されている。ちなみに、シグネーチャーはレースセンサーで、リアが2シングル並列でハムバッキング配線になっている。また、ベックのやつのナットはウイルキンソンだ。シグネーチャーはびびるというコンプレインからLSRに変更になっているのにね。シグネーチャーの立場がないなあ。それから、駒はダイキャストのものを好んでいるそうだ。プレスのやつで手を切ったことがあるらしい。ということで、かなりワイヤードのジャケットに近づいたね。それから、テレキャスは、カスタムショップのレリックのようだ。
ジェニファー:
彼女のギターはワッシュバーンで、マーヴェリックというモデルを基本にしたカスタムだそうだ。噂のタッピング・ミュートが付いている。もちろん、バジー・フェイトン・チューニング・システムになっている。
ドラム:
ソナーだったのね。音はアタックが強く、ヤン・ハマーみたい。ベックがああいう音を好きだったりして。テリー・ボジオもどちらかというとアタック型だ。ハード・ウェアはジブラルタルのラックシステム。これはオマー・ハキムやハービー・メイソンも使っている。ちょっと良さそうだけど、日本で手にはいるのかな。