解説

シンバル オールドKクローン (Old K clone)

オールドKクローンとは?
 オールドKに近い音を狙って作られたシンバル


 「クローン」という言い方がギターのエフェクターで一般化している。「TS9クローン」とか「OD-1クローン」とかね。それにならい、近年オールドKを狙いのシンバルがいろいろ出てきているので、それらを「オールドKクローン」と名付ける。

 オールドKってのは、その昔イスタンブールにあったKジルジャンで作られたシンバルだ。ジルジャンの歴史についてはこちらを参照。 オールドKの識別法はこちらを参照。

 単に古ければいいってもんじゃないようだ。ジャズが流行ってきたのが戦後だ。Aジルジャンがそこに目を付けて、薄いシンバルを作って売り上げを伸ばした。それを見たKジルジャンの米国代理店が、Kジルにも薄いシンバルを作らせたのが50年ごろから。それから技術を向上させたようで、60年くらいから77年にトルコKが消滅するまでのもの、がいいらしい。必ずしもオールド・スタンプ(古めの)がいいとは言えないみたい。

 グレッグ・ハッチンソンに、オールドKを買えと勧められたが、20まんえんくらいするのな。ショップもカノウプスくらいしか無いしね。なかなかキビシイ。

 某ショップの今は無きBBSで、オールドKに似ているとされていたのが、以下の5枚だ。

22 Zildjian Constantinople Light Ride
21 Istanbul Agop Mel Lewis Ride
22 Bosphorus Master Ride
22 Bosphorus Hammer Ride
22 Paiste Traditional Light Ride


 ジルジャン・コンスタンチノープルのラインナップは、この記事のころからかなり変更されており、現在ライトは消滅している。98年のコンスタンチノープル発売時には、ライドはライト(ミディアム・シン)とビッグバンド(ミディアム 21のみ)しか無かった。それがけっこう売れたみたいで、どんどんと種類が増えていった。現在は厚さ別に、ミディアム、ミディアム・シン、シン、とあり、それぞれピッチ違いでハイとローがある。これだけで6種類。さらにベルの形状が違うハイベルってやつが追加されたが消滅。フラット・ライドも追加された。ああ、ややこしい。さらに、ミュージシャンモデルが次々と追加されている。。。
 というわけで、ライトは現在で言うと、ミディアム・シン・ハイかミディアム・シン・ローに当たることになる。

 イスタンブールだと、アゴップではスペシャル・エディション、ドライなシグネチャー、シンディ・ブラックマンプロデュースのOM、メメットではノスタルジアやレジェンド(メメットのメル・ルイス同等品)なんてのがKタイプとして、ラインナップに加えられた。最近は乱造に近く、多くのモデルがある上に、期間限定モデルがいろいろと出ている。

 ボスフォラスのマスターには、ドライな「ビンテージ」が追加された。

 パイステのトラディショナル・シリーズは、日本では正規で売ってないようだ。日本のHPに載ってないが、一部の楽器店には在庫がある。こちらも各種の厚さを揃えており、フラットもある。

 ここにはセイビアン(SABIAN)が無いが、実はKジルジャン直系なのはセイビアンだ。ボールト・アーティザン(VAULT Artisan)ってのを出して対抗しているが、品揃えがまだ少ないね。

 ターキッシュからは、ミレニアムというのが出ている。

 中国からはウーハンの別ブランドであるドリームが、ブリスってのを出している。

 マイネルにはバイザンスという、トルコ製OEMのモデルがある。

 スピッチーノという、個人で作っているクローンも有名。

 「オールドKクローン」はこのあたりか。しかし、種類が増えたね。

 では、レポートをいってみましょう。

20 Zildjian Constantinople Medium Thin Ride Low
 基音がきれいでクラッシュ音もいい。華やかな音だ。変なにごりやピーク感もなく、フラットなカンジ。そのキレイさが長所であり短所でもあるか。ピッチはちょっと高い。

20 Zildjian Constantinople Light Ride
 Medium Thin Ride Lowよりピッチはちょっと高いけど、キャラはほとんど同じ。個体差レベルか。

22 Zildjian Constantinople Light Ride
 キャラは20と似ているが、もちろんピッチはもう少し低い。素直できれいな音だ。ちょっときれい過ぎるんじゃないのってくらい。コンスタンチノープルって、面白味には欠けるのかもね。

21 istanbul Agop Signature Mel Lewis Ride
 ピッチが低く暴れない。素直な音だと思っていたが、コンスタンチノープルと比べるとくせはある。そのくらいの個性はあっていいのかも。シェイプがかなりフラットだな。比較的ムカシに買ったもので、自分のリファレンスだ。

22 istanbul Agop Special Edition Jazz Ride
 かなり特異。レイジングが荒い。仕上げが粗いというか当時っぽい(知らないけど)というか。サイズもちょっと小さいんだよね。22インチっていうと55.9cm。他のは「22inch/56cm」なんだけど、こいつは「22inch/55cm」でその通りに55cmしかない。ピッチは低く、低域がかなり出る。また、叩く位置での音色変化が大きい。かなり暴れるシンバルだ。

22 istanbul Agop OM Ride
 薄目で、レイシングはノーマル。しかし、青黒い表面処理が施されており、適度にドライだ。ピッチは低く、イスタンブールにしては、クセやトラッシュ感が押さえられており、素直。

22 istanbul Agop Collector's Series '06 Limited Edition Ride High-Bell
 06年に出た限定モデル。ピッチは低くダーク。しかし、見た目ほどドライではなく、サスティンは長い。中域にクセがある。

22 istanbul Agop 30th Anniversary Ride
 istanbul Agop が、創業30周年を記念して2010年に限定で発売したモデル。最近の22のクローンにしてはピッチが高く、同社のメル・ルイスやOMと比べても高い。全域でピーク感がなく、トラッシュ感も押さえられており、素直。明るめでダークさが押さえられており、ジルジャンのコンスタンチノープルのピッチを高くしたみたいなカンジ。カップは低くてハンマリングが荒く、いわゆるカップの音は出ない。

22 istanbul Agop Signature Ride
 見た目ほどではないが、ドライ。ピッチは低く音量は控えめ。

22 istanbul Mehmet Nostalgia Crash Ride(旧型)
 ちょっと中域にクセがあり、ややトラッシー。ブライトで、ターキッシュのミレニアムに近い。

21 istanbul Mehmet Nostalgia 70's Ride
 基本ピッチは旧型より低くなった。しかしながら、倍音の構成周波数が高めで、ブライト。ダークでは無いし、ドライでは無い。あんまり暴れないので使いやすい。

20 istanbul Mehmet Mikael Z Tribute Ride
 ピッチはKクローンとしては高い方。あまりダークでは無いし、ドライでは無い。新型ノスタルジアに近い。使いやすそうだけど、個性は無いかも。

22 Bosphorus Master Ride
 かなり薄いんだけど、他と比べるとピッチが高めで硬いカンジ。高域が出てて下があんまり出ない。古い録音(例えばマイルスのプラグド・ニッケルでのトニー・ウィリアムスとか)のイメージには近いかも。同じボスフォラスのハンマー(Hammer)とはかなり傾向が違う。フツーに叩くと絶対こっちの方が厚いと思うけどハンマーより薄いってのがおもしろいな。

21 Bosphorus Master Ride
 上記の22より薄く、ピッチが低い。クセが無く、比較的低域も出る。けっこう暴れる方で、同社の「Hammer」っぽい。なんか、「Master 22」よりは「Hammer」に近い気がする。

22 Bosphorus Master Vintage Ride
 マスターをさらに薄く仕上げ、レイシングを廃し、ドライに仕立てたモデルだ。非常に薄くてフラットなので、持つとかなりたわむ。ローピッチで適度にドライ。クセが無く素直な音だ。

20 Bosphorus Hammer Ride
 ピッチが低くちょっと強く叩くと、ぼわんぼわんにうなる。と思いきや意外とウェイトはあるのな。ピッチの低さは形状によるものか。かなりコントロールしずらく、音量が出ない。エキスパート向きか。

22 Paiste Traditional Extra Light Ride
 非イスタンブール系のパイステが出してるKクローン。音はボスフォラスのマスターに近いが、マスターよりピッチは低く、ちょいドライ。これも低域は出ないね。オールドKのイメージに近いのかも。

22 Paiste Traditional Light Ride
 Extra Lightより若干ピッチは高いが、低域がこれの方が出ていてバランスがいい。ややドライ。

20 SABIAN Vault Artisan Light Ride
 ルックスはいいけど、中域のクセが強すぎる。ちょっとトラッシー。全般にアーティザンはクセがある。

22 Turkish Millenium Ride
 クセが弱く、フラットなカンジ。コストパフォーマンスがいい。ちょっと硬いけど、使えるライド。

22 Dream Bliss Crash Ride
 まずまずいける、中国製のKクローン。意外と素直。ハンマリングが少なくて、ルックスがイマイチだな。

20 Meinl Byzance Thin Ride
 音はかなりイスタンブールに近い。トラディショナル・シリーズみたいなカンジかな。比較的クセがなく、それほどダークではない。ハードな演奏では暴れるので、メインのライドとしては繊細さが必要だ。

20 Spizzichino Ride Asian Alloy
 形状がフラットでピッチも低く、レイシングは浅めだ。カップの形状はイスタンブールのKクローンに似ているおわん型。音は、ピッチが低くダーク。そこそこトラッシーで、暴れる。


 てなわけで

・古い録音で聞かれるオールドKのイメージは、ボスフォラスとパイステが近い
・キレイなのは、コンスタンチノープル

 値段を考えるとイスタンブールのメル・ルイス、ノスタルジア(新型)あたりがオススメかな。コンスタンチノープルは外さないカンジなので、慎重派に。

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Last Update : 2007/01/03