これを聞こうA-Z

第1回:A = Art of Noise

Who's Afraid of the Art of Noise ? / Art of Noise
(誰がアート・オブ・ノイズを? / アート・オブ・ノイズ 84年)

収録曲:
 Time for Fear (Who's Afraid) / Beat Box (Diversion One) / Snapshot Listen Listen / Close (To the Edit) / Who's Afraid (Of the Art of Noise) / Moments in Love / Momento / How to Kill / Realization

 アート・オブ・ノイズ(以下AON)は83年にミュージックシーンに登場した。当初は誰がメンバーであるか隠匿されていた。しかし、所属レーベルはZTTで、このレーベルを設立した元バグルズ所属のトレバー・ホーンがプロデュースしていることは明白であった。ほとんど彼のバンドと言っていいだろう。

 AONは、当時はまだ出たてのサンプラーを大胆に導入したことで有名である。彼らはフェアライトCMIというキカイを使っていた。初期バージョンはただの8ビットのサンプラーなんだけど、1千万以上もしたのだ。このサンプラーをメジャーにしたのは、イエスのロンリーハートなどで使われたオケヒットだろう。仕掛人はやはりトレバーである。当時彼は、イエス、ABC、フラーキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド、グレイス・ジョーンズなどなどを手がける、超売れっ子プロデューサーだったのだ。

 音づくりは非常に斬新であり、現代の電子音楽に与えた影響は多大だ。ほとんどサンプラーで作られた打ち込みとDX-7のシンベという手法は、いろんなところで使われたものだ。もちろん、日本の歌謡曲でも。AONをそのまま聞いたことがある人は少ないかも知れないが、どこかで耳にしているはずだ。本アルバムの5曲目もCM(確か原田伸郎のナレーションだった)で使われていたし、Mr.マリックのBGM(でゅわでゅわでゅわでゅわでゅわでゅわってやつ)や、仮面ノリダー(古くてすいません)で悪い改造人間が出てくるときの音楽(ちゃーちゃらっちゃちゃーってやつ)などなど、CMやジングルなどで多く使われた。

 そのサンプラーであるが、フェアライト、シンクラビア(リトナー、メセニー愛用)、といった巨大サンプラーからAKAIの時代になり、サンプラーによるおどかし系音楽はほとんど消滅してしまった。ネタは尽きるものなのね。今ではごくごくフツーに使われている。

 キーボード史というか電子音楽史を語る上で、AONは外せない。ただし、このアルバムと、「In No Sence? Nonsence!」を買えば充分。ベストでも許そう。

Discography
 1983 Into Battle with the Art of Noise
 1984 Who's Afraid of the Art of Noise ?
 1986 Daft
 1986 In Visible Silence
 1986 Re-Works of the Art of Noise
 1987 In No Sense? Nonsense!
 1988 The Best of the Art of Noise
 1989 Below the Waste
 1990 Ambient Collection
 1991 The FON Mixes
 1996 Drum and Bass Collection
 1999 The Seduction of Claude Debussy


選外:

 Airplay / Airplay (エアプレイ)
  若かかりし頃の黄金コンビ、デビッド・フォスター=ジェイ・グレイドン。演奏はTOTO。名盤。

 Elegant Gypsy / Al Di Meola (アル・ディメオラ)
  曲がいい。アンソニー・ジャクソンとガッドのリズム体も。ディメオラ初期の圭作。

 This Time / Al Jarreau (アル・ジャロウ)
  ジェイ・グレイドンのプロデュースが光る。

 I.O.U. / Alan Holdsworth (アラン・ホールズワース)
  借金してつくって良かったね。

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Last Update : 2003/06/24