これを聞こうA-Z

第6回:E = Earth Wind & Fire

RAISE! / Earth Wind & Fire
(天空の女神 / アース・ウインド・アンド・ファイアー 81年)

メンバー:
 Maurice White (vo, kalimba), Philip Bailey(vo), Ralph Johnson (vo, percussion), Johnny Graham(g), Roland Bautista (g), Andrew WoolFolk (ts), Larry Dunn (key), Verdine White (b), Fred White (ds)

収録曲:
 Let's Groove / Lady Sun / My Love / Evolution Orange / Kalimba Tree / You Are A Winner / I've Had Enough / Wanna Be With Me / The Changing Times

 リアルタイムで聞いたかどうかは、その音楽に対する感情というか印象というか造詣というか、そういったものを大きく左右すると思う。その時代の音楽事情・流行・テクノロジーなどが反映された音楽をその時に聞くのだから。さかのぼって昔の音楽を聞くのはなんとなく「お勉強」臭が漂う。新しいモノを追いたいって気持ちが強かったしね。また、70〜80年代は技術の進歩が激しく、少し前の音楽はすごく古く感じられてしまった。

 もちろん、いいものはいつの時代でもいいんだけどね。

 ところが、今やロックは古典芸能なので、最近の若いコは昔の音楽を聞くことに抵抗が無いらしい。古い音楽もただの選択肢でしかないようだ。

 第6回の「E」は、アース・ウインド・アンド・ファイアーだ。

 アーティストとしてアース・ウインド・アンド・ファイアー(以下アース)を選ぶのにあまり問題はないと思うのだが、このアルバムを選ぶのは異論があろう。でも、私が一番よく聞いたのはこのアルバムで、次が「Powerlight」(創世記)だ。この2枚はまさにリアルタイムなのだ。

 アースは70年代末に売れまくった、ディスコ/ソウル/ブラック・コンテンポラリーのバンドである。宇宙のファンタジーやセプテンバーをはじめとするビッグヒットを多数はなち、「I Am」(黙示録)で人気の絶頂を極めた。しかし、2枚組大作「Faces」(フェイセス)のセールスが翳りを見せる。すると「Raise!」も「Let's Groove」のヒットは出すものの成績は芳しくなく、「Powerlight」ではスマッシュ・ヒットさえ出せなかった。そして、ホーンを排除したカス(失礼)アルバム「Electric Universe」で完全に終わるのである。盛者必衰の理をあらはしたのだ。

 整理すると以下である。

【期】/【名称】  /【アルバム】       /【セールス】
1期 /ブラック期 /「Spirit」まで      /そこそこ
2期 /ディスコ期 /「All 'n' All」「I Am」  /ばか売れ
3期 /混迷期   /「Faces」         /ありゃりゃ
4期 /成熟期   /「Raise!」「Powerlight」 /やばいぞ
5期 /おしまい期 /「Electric Universe」   /全くダメ
6期 /過去の栄光期/ それ以降        /ま、家族が暮らしていければ

 一般に人気があるのは2期で、楽器をやってる人たちには、TOTO+デビッド・フォスターの3期の人気が意外と高い。しかし、私はあまり売れなかった4期の2枚が好きである。洗練されたアレンジと音づくり、整理されたジェリー・ヘイのフェニックス・ホーンズと、ある意味での完成された姿になっていると思う。この路線でもう少し有能なソング・ライターを確保すれば、けっこういける気はするのだがどうだろう。「Raise!」のトータルな完成度は高く、ヒット・チューン「Let's Groove」から一連のすっきりしたサウンドは、好感度が高い。気持ちよく1枚を通して聞けるアルバムだ。全然売れなかった「Powerlight」だってアルバムのオープニングから1曲目の「Fall in Love with Me」はかっこいいと思う。この曲がなぜ売れないのかよくわからない。ただ、このアルバムはこれ以外にキャッチーな曲がない。全体にクールなサウンドは好みなので非常に惜しい。

 ギターに注目してみよう。時代によって扱いが大きく変わっているのだ。1〜2期ではリズムにおけるウェイトが非常に大きく、1期では完全に支配していた。2期に入ってだんだん支配力が弱まり、3期ではスティーブ・ルカサーがディストーションでオブリを弾いてたりする。ここまでのギタリストは、名ファンクギタリストとして名を馳せたアル・マッケイだ。彼の中域が出たいかにもブラックなカッティングは、アースのグルーブの原動力であった。しかし、3期においてはその存在感は薄く、このアルバムを最後にバンドを去ってしまった。4期のギターは、当時の潮流にならってクリーンでややドンシャリなサウンドになり、以前のごりごりした音とは全くかけ離れたものになった。個人的には、カッティングはポール・ジャクソンJR派であり、4期の音はまあまあ好みであるが、それに対しアル・マッケイはいかにも臭い。しかし、これがアースの魅力だったのかも知れない。

 アースのヒットは、単にディスコブームにサウンドがマッチしていたというだけだろう。音楽の完成度とセールスとは、関係が無いという気がしてならない。それは、ある意味不幸だったともいえる。

Discography             凝った邦題
 1971 Earth, Wind & Fire
 1971 The Need of Love
 1972 Last Days and Time     /地球最後の日
 1973 Head to the Sky
 1973 Open Our Eyes        /太陽の化身
 1975 That's the Way of the World /暗黒への挑戦
 1975 Gratitude          /灼熱の狂宴
 1976 Spirit           /魂
 1977 All 'n' All         /太陽神
 1979 I Am            /黙示録
 1980 Faces
 1981 Raise!           /天空の女神
 1983 Powerlight         /創世記
 1983 Electric Universe
 1987 Touch the World
 1990 Heritage
 1993 Millenium
 1997 In the Name of Love
 2003 The Promise

 基本的にアースは「Electric Universe」でおしまい。あとは失業対策事業だ。ま、なんだけど「Touch the World」と「Heritage」も結構好きだ。「System of Survival」なんかかっこいいでしょ。ちょっとキャプテンE.O.だけど。


選外:

 Finger Painting / Earl Klugh(アール・クルー)
  名盤。聞くべし。ガッドとウィル・リーのリズム体もいい。

 Crossroads / Eric Marienthal(エリック・マリエンサル)
  テクニック抜群の、元チック・コリア・エレクトリックバンドのアルトサックス。テリ・リン・キャリントンのドラムもいい。ソロはいっぱい出てるが、この3rdアルバム以外はかなりポップ。んで、ポップすぎてつらい。

 Pornograffitti / Extreme(エクストリーム)
  ヌーノのギターが秀逸。ばっちりドライブしている。曲もいい。アルバムごとに随分音楽性が違うバンドだったが、この2ndが飛び抜けている

banner
Last Update : 2003/07/01