これを聞こう あーわ

第7回:ま行 = 松田聖子

風立ちぬ / 松田聖子
(Kazetachinu / Seiko Matsuda 81年)

収録曲:
 冬の妖精       (作詞:松本隆 作曲:大瀧詠一 編曲:多羅尾伴内)
 ガラスの入江      (作詞:松本隆 作曲:大瀧詠一 編曲:多羅尾伴内)
 一千一秒物語     (作詞:松本隆 作曲:大瀧詠一 編曲:多羅尾伴内)
 いちご畑でつかまえて (作詞:松本隆 作曲:大瀧詠一 編曲:多羅尾伴内)
 風立ちぬ       (作詞:松本隆 作曲:大瀧詠一 編曲:多羅尾伴内)
 流星ナイト      (作詞:松本隆 作曲:財津和夫 編曲:鈴木茂)
 黄昏はオレンジ・ライム(作詞:松本隆 作曲:鈴木茂 編曲:鈴木茂)
 白いパラソル      (作詞:松本隆 作曲:財津和夫 編曲:大村雅朗)
 雨のリゾート      (作詞:松本隆 作曲:杉真理 編曲:鈴木茂)
 December Morning   (作詞:松本隆 作曲:財津和夫 編曲:鈴木茂)

 62年久留米の生まれ。78年に「ミス・セブンティーン」九州大会に出場。79年にNTVドラマ「おだいじに」に役名「松田聖子」で出演。80年にNHK「レッツゴーヤング」サンデーズのメンバーとしてレギュラー出演。シングル「裸足の季節」でデビュー。2ndシングル「青い珊瑚礁」でブレイクし、1stアルバム「SQUALL」をリリース。新人賞を総なめし、「ブリッコ」と呼ばれ、「聖子ちゃんカット」を町にあふれさせ、「おかあさーん」と叫びながら涙を流さずに泣いた。その聖子ちゃんも、もう42才だ。

 アルバムの選択が非常に難しい。「P・R・E・S・E・N・T」「ピンクのスクーター」収録の「Pineapple」。「セイシェルの夕陽」の「ユートピア」。「時間の国のアリス」「AQUARIUS」「Rock'n Rouge」の「Tinker Bell」。尾崎亜美の「天使のウィンク」収録の「The 9thWave」。「螢の草原」「瑠璃色の地球」の「SUPREME」。デビッド・フォスターのプロデュースで「続・赤いスイートピー」収録の「Citron」。うー、悩ましい。いろいろ考えたが結局「風立ちぬ」にした。しかし、このタイトルがなー。堀辰雄先生に申し訳ない。いざ生きめやも。

 初期のアルバムはとてもかっこいい。曲、アレンジ、演奏、歌、どれをとっても素晴らしい。しかし、特定の作詞家・作曲家・編曲者・演奏者・プロデューサーを使ってるわけではない。いろんなヒトをうまいこと使い分けている。そこがすごい。優秀なディレクターがいるんだろうな。それが誰かわからないのだが。CBSソニーのヒトなのかな。10年に渡ってこんなにクオリティの高い音楽を作り続けられるのは賞賛に値する。

 しかし、90年頃に歯車が狂いだす。まず、米国進出の野望。これ自体はそんなに悪くはない。米国向けアルバムの出来はなかなか良い。しかし、その自我の目覚めが問題だった。まず作詞を手がけ始め、作曲するようになり、「1992 Nouvelle Vague」からはすべての曲を自作するようになってしまった。で、アレンジャーが鳥山雄司である。この組み合わせが続くのだが、良くないんだな。曲がイマイチな上に鳥山のごてごての打ち込み。聖子の良さが生かされていない。同時代でも、鳥山を使っていない米国向けのアルバム「Was It The Future」は結構いいのにな。おそらく、聖子本人は鳥山が気に入ってたのだろう。このように、90年代にはいってからは、自分自身で「松田聖子」をプロモーションしていた。そこが間違いだ。彼女にはアーティストとしての才能はおそらく無い。きっと無い。絶対に無い。優秀なスタッフあってのシンガー「松田聖子」であることに気づかないのだ。

 ところが、転機は訪れる。99年発表の「永遠の少女」では、作詞において全面的に松本隆を起用し、作曲も他の作家を起用している。これがなかなか良い。さすがに声の張りは失われつつあるけどね。この路線を進めればまた私の聖子が帰ってくるかも知れないなと思った。

 だが、またまたワナにはまるのである。そう、原田真二である。別に、彼が嫌いなわけではない。彼の作品でも好きな曲はあって、「ピンクのスクーター」などはお気に入りである。しかし、アルバム1枚をまるまる任せるのはつらい。力不足である。一作曲家として参画すべきなのだ。「20th Party」はディズニーランドのパレードのようである。

 あああ・・・。

 本作の大滝詠一はいい。「いちご畑でつかまえて」は発表時に大きな話題となった、のは私のまわりだけか。すばらしいメロディー感覚とアレンジセンスだ。なお、この曲では、聖子のくしゃみが聞ける。たららら、「くしゅん」。たららら、たっとんたかとん。私はサンプリングして、マックのビープ音として使っていた事がある。全般にアコギがきれいだ。冒頭の「冬の妖精」のイントロで、ちょっとうきうきしてくる。

 90年までのアルバムは駄作がない。ぜひぜひ聞いて。本作と「Pineapple」「Tinker Bell」「SUPREME」「Citron」は特にお勧めだ。なお、私はオリジナルアルバムを全部持っている。えへん。

教訓:
 自己主張はほどほどに
 恋愛と仕事は分けましょう

Discography

オリジナル
 1980 SQUALL
 1980 NorthWind
 1981 Silhouette
 1981 風立ちぬ
 1982 Pineapple
 1982 Candy
 1983 ユートピア
 1983 Canary
 1984 Tinker Bell
 1984 Windy Shadow
 1985 The 9thWave
 1986 SUPREME
 1987 Strawberry Time
 1987 Snow Garden
 1988 Citron
 1989 Precious Moment
 1990 We Are Love
 1992 1992 Nouvelle Vague
 1993 Diamond Expression
 1994 Glorious Revolution
 1995 It's Style '95
 1996 Vanity Fair
 1997 My Story
 1998 Forever
 1999 永遠の少女
 2000 20th Party
 2001 LOVE & EMOTION VOL.1
 2002 LOVE & EMOTION VOL.2
 2004 Sunshine
 2005 Under the beautiful stars
 2005 fairy
 2006 Eternal II
 2006 bless you
 2007 Baby's breath
 2008 My pure melody
   
米国向けオリジナル  
 1985 Sound of My Heart
 1990 Seiko
 1996 Was It the Fufure
 2002 Area62
   
映画サントラ  
 1981 野菊の墓
 1983 プルメリアの伝説
 1984 夏服のイヴ
 1985 カリブ愛のシンフォニー
 1985 幸福物語〜ペンギンズメモリー
 1996 Dearウーマン
   
ベスト  
 1981 Seiko Fragrance
 1982 Seiko Index
 1983 Seiko Plaza
 1984 Seiko Town
 1985 Seiko Train
 1985 Seiko Box
 1988 Seiko Monument
 1991 Bible
 1994 Bible ll
 1996 Bible lll
 1996 Complete Bible
 1997 Seaside〜Summer Tales〜
 1997 Dear
 1998 SEIKO 96〜98
 2000 Love
 2000 SEIKO SUITE
 2003 Another side of Seiko 27
 2004 Best of Best 27
 2005 Seiko Smile

クリスマス / 企画  
 1982 金色のリボン
 1984 Seiko Avenue
 1984 Touch Me, Seiko
 1986 Love Ballade
 1987 Snow Garden
 1989 ゴヤ…歌でつづる生涯
 1991 Eternal
 1991 Christmas Tree
 1992 Sweet Memories '93
 1993 A Time for Love
 1996 Winter Tales
 1996 Guardian Angels
 1997 Sweetest Time
 1998 Seiko・Celebration
 1998 Ballad〜20th Anniversary〜
 1999 Re-Mixes
 2000 Remixes2000


選外:

 Pharmasy / 槇原敬之
  彼のポップな感覚は好き。でも歌詞をどうにかしてくれ。

 SON / 松岡直也 & Wesing
  時代によって結構変わる音楽性。和田アキラ時代のこれを。この頃は和田カラーが強い。

 Surf and Snow / 松任谷由美
  昔のミーハーだが本作を。なんだかんだで出来は良い。

 Mother Father Brother Sister / MISIA
  昨今のジャパニーズ・ソウルで唯一いいなと思うヒト。

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Last Update : 2004/02/25