これを聞こう あーわ

第5回:な行 = ナニワエクスプレス

ノー・フューズ / ナニワエクスプレス
(No Fuse / Naniwa Express 82年)

メンバー:
 青柳誠(ts,ss,key), 岩見和彦(g), 中村建治(key), 清水興(b), 東原力哉(ds)

収録曲:
 BELIEVIN' / THE STATUE OF LIBERTY / BETWEEN THE SKY AND THE GROUND / BLUE WILLOW / THE KOYA-SAMBA / FIELD ATHLETOR / FOR MY LOVE

 77年岩見、清水、鎌田清(ds)を中心に大阪で結成。78年に中村が加入し、8.8 Rock Day(ヤマハのアマバンコンテスト関西地方版)に参加。この年のEast West(ヤマハのアマバンコンテスト関東地方版)にカシオペアが参加しているのは、なにかの因縁といえよう。81年に青柳、東原加入。82年に本作でデビュー。時はフュージョンブームで、上方フュージョン3大バンドに数えられる。あとの2つは、菅沼孝三さんがはいっていた99.99(フォーナイン)と、古川初穂・望兄弟率いる羅麗若(ラレイニャ)だ。ナニワは関西ではダントツの人気を誇り、東のカシオペア、西のナニワと言われていた。83年には全国ツアーを敢行。84年に日野皓正と共演し、その縁で彼をゲストに迎えて85年に「Silent Savanna」をリリース。これが最後の作品となる。青柳がピアニストとして活動することを決めたために86年に解散した。90年代にはイベントなどでときたま再結成されていたが、02年にはオリジナルメンバーで完全復活し、03年には18年振りのアルバム「Life of Music」をリリースした。

 音はなんというか独特の味わいだ。ねちっこいリズム体と良くも悪くも薄い中村のシンセに、あんまりうまいとは言えない青柳のサックスとみょーなローズ。ギターはいかにもジャパニーズっぽいサウンド。欧米では生まれようのないカンジのバンドだ。

 80年代前半の3大フュージョンバンドにおける、リズム体について整理してみよう。

ナニワ
 / 清水(関西医大) / 東原(叩き上げずーじゃ)
 / ねちねちこてこてお好み焼き
カシオペア
 / 櫻井(慶応大) / 神保(慶応大)
 / お坊ちゃんスマートテクニカル
スクエア
 / 田中(ずうとるびのバック) / 長谷部(ジャニーズ事務所)
 / すっきりうたばん無理しないもんね

 こんなカンジかな。当時のスクエアの二人は、歌謡曲の歌バン出身だけあって無難な演奏だ。そのころのスムーズ・フュージョン・スクエアにはマッチしていたかも知れない。ナニワはほんとこてこて。スマートって言葉がまったくあてはまらない。楽器がまた個性的で、清水興はアトランシアのガーランド。力哉さんは24ワンバス3フロアのトニー・ウィリアムズ・セットだ。もともと力哉さんはジャズのヒトで、同じライブハウスに出ていた清水に強く誘われてナニワに参加したのだ。スタイルはもろにトニー・ウィリアムズだ。当時、京都は北山にあったライブハウスRAGにジャズのカルテットで出ており、よく聞きにいった。すごかったよね。パワフルで緩急自在、かつ超個性的。ってトニー譲り。力哉さんのジャズをまた聞きたいものだ。最近、目立った活躍が無いのがさみしい。野獣王国もクビになっちゃったし。

 本作のオープニングを飾る「ビリービン」は、当時のフュージョン系アマバンの間では、「アサヤケ」(カシオペア)「マジック」(スクエア)の次に多く演奏された曲だ。というのも、本作発表時のLPには「ビリービン」の楽譜が付いていたのだ。当然CDではなく、LPの巨大なジャケットでなければ考えられないサービスだ。また、初期のライブではその譜面を入場者に配っており、私ももらった。

 赤井英和という役者がいるが、彼は元ボクサーで浪速のロッキーと呼ばれていたのをご存じだろうか。彼のリングテーマはナニワの曲で、もともと「シンクロナイズド」という曲名だったが、彼のテーマになったことで「レッド・ゾーン」と改題された。これは2ndに収録されている。ワンバスでツーバス風フレーズをやっているのが特徴だ。ちなみに、この頃にはまだツインペダルは発明されてない。

 中村建治は「ケンジター」という自作のショルダーキーボード使い、ライブではこいつで前に出てきていた。まだショルダーは国産前夜で、ムーグのリバレーション、クラビターしかない時代だ。中身はなんだっけかなー。音は本作の「BETWEEN THE SKY AND THE GROUND」などで聞ける。

 ナニワは大学時代に一番多くライブを見たバンドだ。当時、京都は銀閣寺前にサーカス・サーカスというライブハウスがあり、そこでよくライブをやっていた。ホールのライブや学園祭も行った。サーカス・サーカスが経営難で閉店するときのライブにも行ったが、その時の力哉さんが印象的だった。1部と2部の合間に、自分の母から全員に一杯おごるとアナウンスしたのだ。「酒も飲まないでライブを観るんじゃない。そんなことだから(サーカス・サーカスが)つぶれるんだ」といった内容を話したことを憶えている。ちょっと考えさせられた。

 みなさんも音楽にカネを落として下さい。CDや楽器を買って下さい。カネを落とさないと、おもしろいものは生まれないでしょう。「最近おもしろいバンド(楽器・ライブハウスなど)が無くって」という前に、ちょっとでも面白いものを買って下さい。ライブに足を運んで下さい。それがいい音楽・楽器を育むのです。

 本作はまだ新品で買える。ぜひ聞こう。

Discography
 1982 No Fuse
 1982 大宇宙無限力神
 1983 Wind Up
 1984 Modern Beat
 1985 Silent Savanna
 1986 Scarlet Beam (best)
 1993 Red Zone (best)
 2003 Life of Music

選外:

 Bitter and Sweet / 中森明菜
  「かざりじゃないのよ涙は」収録。シングルとは別バージョンだ。2曲目の「ロマンティックな夜だわ」はバンドでやってた。この曲のドラムはポンタだ。初期の明菜はいいよ。

 Catch the Nite / 中山美穂
  角松敏生プロデュース。現ダンス☆マン作の楽曲もはいってる。彼女が歌手だってことを知らないヒトも増えてるんだろうなー。

 Ali's Dance / 布川俊樹&VALIS
  ちょっとなんとか風の多いこのアルバムを。ウェザーとかジョンスコとかね。布川さんは、ぱらーっと弾くとかっこいいんだよね。なお、ベースは納さんだ。ネックはドラムの木村万作があまりかっこよくないこと。

 Dreams Can Go / 則竹裕之
  元羅麗若の古川兄弟参加。則竹のドラムは好き。音造りもすっきりしていてよろしい。ドラマーのソロってあんまりおもしろくないの多いもんね。神保さんがビデオでやっている石黒彰作の「サイバー・フリッカー」を取り上げてるのが意外。

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Last Update : 2003/08/13