ライブ

99/11/21 コーラスライン at 四季劇場

日程:
 99年11月21日(日)
場所:
 四季劇場(浜松町)

 以前、「オペラ座の怪人」を見たことがある。音楽も素晴らしく、おもしろかった記憶がある。今回のミュージカル鑑賞は会社のイベントで、無事抽選をくぐりぬけて参加することができた。

 ダンスはあまりかっこよくない。私はけっこうダンスが好きで、昔はディスコにもよく行った。最近はやりのクラブとやらにも行きたいものである。テレビでやってるダンスのコンテスト番組もよく見ている。現代のダンスと比べて、見劣りするのは否めない。唯一、4グループに分かれたコンビネーションのところがかっこよかった。歌もそんなにうまいとはいえないだろう。演技は、ミュージカル風というか舞台演劇風で、一種独特のものだ。総じてあまりおもしろいとは言えない。

 しかし、テーマである。いかに人生を過ごしてきたかという、非常に重いものだ。ここは考えざるを得なかった。登場人物はミュージカルの舞台に立つという同じ目標を持っている。そこに至る人生があり、その夢のために努力している。

 いわゆる「アイデンティティ型人間」というスタイルがある。自分のアイデンティティをなにかに求めて、それを達成することで自我を満たす。自己の存在を証明し、人間として生きていけるというスタイルだ。この考え方は、現代では非常に難しくなってきている。近代以前に於いては、そのアイデンティティはパン屋であったり、裁縫屋であった。昔は比較的簡単に達成できたのだが、時は大量生産時代に入り、人間は歯車となった。また情報が増えた。人々の夢はたとえば映画スターになり、簡単に達成できるものではなくなった。この考え方では自我を満たせるのは、ごく一部の人間である。しかし、依然としてこのタイプの人は残っている。

 よく女の子が、好きなタイプとして「夢を持ち続けている人」などという。さて、その人は夢をかなえられたのだろうか。夢を持たずとも自我を満たせる人間の方が現代に適している。しかし「コーラスライン」の彼らは夢を求める。間違ってるなんて誰も言えない。自分も自分について考えざるを得ない。

 我々は歯車である。次から次へと出てくる業務に追われている。ほとんどの人が、感性に訴えたり感動を与えたりすることと無縁の仕事をしている。そんなことはブロードウェイで踊ることとほとんど等価の夢だろう。そんな夢は持たない方がいい。では、いかに仕事において自我を満たすか。もっと現実的な達成感を与えるようなやり方を考えるべきだ。通常の業務の中で味わえる達成感が必要である。そうすれば、夢を持ち、実現する者も出てくるかも知れない。何人かのスターがいれば、会社というミュージカルは成功できる。支えるのは我々だ。

 人類の一番の間違いは、自己の存在証明を必要とすることだろう。そこを考え直した方がいい。

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Last Update : 2003/08/23