解説

歴史 SONOR 〜ソナー

 ソナーはドイツの総合打楽器メーカーだ。創業は1875年。1930年代からドラムセットの生産を開始する。75年発表のPhonicシリーズで人気を博した。Phonic、Signature、Liteといった上級機は非常に高価で、憧れの的だった。
 95年に企業としての大きな節目がある。そこで、75年のPhonicから95年までと、それ以後に分けて解説する。

●75〜95年

上級機(ドイツ製)
 年
75-90 Phonic  (beech)
82-95 Signature (beech)
83-95 Lite   (birch)
89-95 Hilite  (maple)
93-06 Designer (maple, birch, acryl)

 Phonicは伝統のビーチ製で、9プライ10mmと胴は厚めだ。長寿モデルで、現在もスネアだけは日本市場限定で販売されている。

 最高級機として発表されたSignatureは、heavyと呼ばれるビーチ12プライ12mmと、バーチ12プライ7mmのliteの2仕様があった。外装はブビンガやエボニーなどの高級材が使われていた。また、後にSignature-SEというメイプル胴も追加された。

 準最高級機として追加されたのが、Liteだ。胴の厚さはタムが6mm、スネアとキックが7mmと薄目だ。材料はスカンジナビアン・バーチで、日本製バーチドラムの北海道産とは、同じバーチながら特性が違うといわれている。

 80年代には、各社ともメイプル製のドラムを主力にしてくる。かなり後手となったのがHiliteだ。ハードウェアを一新し、当時はやりのハイテンション・ラグを採用している。胴は、9プライ7.5mmのメイプル製だ。パーツに銅メッキを施し、ラメ入りの塗装を施したHilite Exclusiveや、ソナーとしては珍しいシグネーチャーモデルである、浅胴のHilite Nussbaumもラインナップされた。

 93年に発表されたのがDesignerだ。パーツを一新し、流行のフローティング方式タム・マウント(TAR)を採用した。当初、maple-heavy(メイプル厚胴)、maple-light(メイプル中厚)、birchの3種類の展開だったが、後にmaple-heavyが無くなり、Delightで好評を博したvintage maple shell(メイプル薄胴+レインフォース)が追加され、さらにX-Rayと呼ばれるアクリル胴が05年に追加された。

中級機(ドイツ製)
 年
85-87 Performer(beech)
87-90 Performer(poplar)
90-95 Force maple(maple)/ 3000(birch)/ 2000(poplar)/ 1000(poplar)

 85年にPerformerを発売する。Phonic系のパーツを使っており、材質はビーチだが、タムのシェル厚はPhonicの10mmに対し7mmとやや薄い。しかし、87年には材質がポプラに変更されてしまった。

 90〜95年における初中級機の名称はForceだ。この初代Forceは、中級機で4種類、初級機で3機種もあった。
 中級ForceはHilite系のハイテンションラグだ。これらは中級機とはいえ、ドイツ製でかなり高価だった。Force 3000は、Liteよりちょっと厚めのスカンジナビア・バーチ製9mm胴を有し、隠れた名器と言われている。日本製の高級機よりずっと高かった。

初級機(台湾製 OEM)
 年
88-90 International(mahogany)
90-95 Force Custom(maple + mahogany)/ Force(poplar)
93-95 Force 2001(mahogany)

 88年に初のOEMモデルである、台湾製のInternationalを発売。そしてPhonic、Performerとともに、Internationalは90年に生産中止となる。
 後継機はForce CustomとForceだ。Force Customはジャズ向け、Forceはロック向けというカラーが打ち出されていた。また、ラグは余り物なのだろうか、Phonic系のパーツを使っていた。
 また、93年頃に主力市場である米国限定で出したForce 2001は、他社と同じ角頭ボルトを採用していた。ソナーのテンション・ボルトは伝統的に、他社と異なるスロッテッド(マイナス溝頭)であり、この製品は初の角頭ボルト採用機である。商品名やパーツの仕様などから察するにかなりの場当たりモデルであり、当時の経営の苦しさを物語っている。

 90年代に入ると、経営が思わしくなくなる。大きな理由は2つだろう。ひとつは、80年代中頃から主流となったメイプル胴のラインナップが遅れたこと。もうひとつは、中初級機が、日本製や台湾製に対する競争力を持っていなかったことだ。このころの商品戦略はかなり混乱しており、ラインナップはわけがわからない。

●95年〜

上級機
 年
93-06 Designer (maple, birch, acryl)
00-12 Delite  (maple)
06-  SQ2    (maple, birch, beech, acryl)
12-  ProLite  (maple)
15-  Vintage  (beech)

中級機
 年
95-97 S-class    (maple + birch)
97-00 S-class Maple (maple)
00-06 S-class Pro  (maple)
07-12 S-Classix   (birch)
12-17 Ascent     (beech)
17-   SQ1      (birch)

初級機
 年
95-97 Sonic Plus (birch)
97-00 Sonic Plus2 (maple + mahogany)
00-03 Force 3001(maple + basswood)/ 2001(←)/ 1001(basswood)
03-05 Force 3003(maple + basswood)/ 2003(←)/ 1003(basswood)
05-07 Force 3005(maple)/ 2005(birch)/ 1005(basswood)/ 505(←)
07-09 Force 3007(maple)/ 2007(birch)/ 1007(basswood)/ 507(←)
09-18 Select Force (maple) / Essencial Force (birch) / Smart Force (poplar)
18-  AQ2(maple) / AQ1(birch)

 95年、経営難から韓国の資本が入った。大幅な商品構成の変更が行われ、Designer以外のモデルはすべて生産中止となった。初中級機は、Sシリーズ(S-class / Sonic)2機種のみのラインナップに整理された。台湾製のOEMは中止され、生産はすべてドイツ国内となった。

 97年、中国に工場を新設し旧Forceシリーズの生産設備が移管され、Sシリーズの生産が開始された。以降、初級機はすべて中国生産となる。

 00年にも、ラインナップの見直しが行われる。Deliteが準最高機種としてデビュー。胴は当時主流になり始めた薄胴+レインフォースだ。vintage maple shellと呼ばれ、後にDesignerでもこの仕様が追加される。
 初級機はForceの名称が復活する。この2代目Forceシリーズは、ソナー伝統のスロッテッド・テンション・ボルト(マイナス溝頭)を廃し、他社と共通のボルト(角頭)に変更された。また、300*、200*は「TAR」と呼ばれるフローティング・タム・マウントを採用している。05年モデル以降ではmaple(3005,7)、birch(2005,7)という性格分けがされた。

 06年にSQ2を最高級機として発表。フルオーダーシステムで、シェルやパーツが選べる。シェル材はビーチ、バーチ、メイプル、アクリルの4仕様、シェル厚はビンテージ(シン+レインフォース)、シン、ミディアム、ヘヴィーの4仕様をラインナップ。ビーチが久々に復活し、キックに16インチが追加された。また、パーツのほとんどを一新し、テンション・ボルトは伝統のスロッテッドと、他社同様の角頭ボルトの両方を選べるようになった。

 07年、下位機もSQ2に準じたパーツに変更され、テンション・ボルトは角頭ボルトに変更された。これまでの最高機種、Designerは廃止。S-Class ProはS-Classixに移行し、シェル材はスカンジナビアン・バーチに変更された。

 09年、Forceシリーズがモデルチェンジする。

 12年、DeliteがProLiteに、S-ClassixがAscentに移行した。Ascentは「ヨーロピアン・ビーチ」だそうで、ソナーでは珍しい横木目だ。

 15年、上級機に、60年代風のデザインを採用した、ビーチ材のVintage Seriesが追加された。

 17年、中級機がAscentから、バーチ材のSQ1に変更された。

 18年、初級機がAQ2,AQ1に変更され、長らく使われてきたForceの名前が消滅した。

 ここ50年の製品構成はこんなカンジだ。

参照:
 SONOR オールド・スネア 一覧
 SONOR Drums

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Last Update : 2005/03/03