Tribes, Vibes & Scribes / Incognito
(トライブス、バイブス+スクライブス / インコグニート 92年)
メンバー:
Jean-Paul 'Bluey' Maunick(g), Maysa Leak(vo), Randy Hope-Taylor(b), Andy Gangadeen(ds) 他
収録曲:
Colibri / Change / River in My Dreams / Don't You Worry about a Thing / Magnetic Ocean / I Love What You Do for Me / Closer to the Feeling / L'arc en Ciel de Miles / Need to Know / Pyramids / Tribal Vibes
インコグニートはジャン・ポール "ブルーイ" モーニックのプロジェクトだ。81年にマイナーレーベルからアルバム、「Jazz Funk」を出すがすぐに活動を休止。10年後の91年に「Inside Life」で復活する。復帰後2枚目の「Tribes, Vibes & Scribes」から「Don't You Worry about a Thing」のスマッシュヒットを放ち、ここからガツンと売れ始めた。ブルーイはプロデューサーとしても名声を上げ、ジョージ・ベンソンをはじめとする多くのアーティストを手がけている。
基本的には70年代のファンクを意識したサウンドではあるが、初期のアルバムではラテンフレーバーも強く感じられる。しかし、近年のアルバムでは完全に70年代方向にプロデュースされており、当時っぽい音を使いながら新しい解釈をとりいれたクリーンなサウンドになっている。ピアノはほとんどがローズの音でドラムもドライさとハイハットのバランスが完全に70年代。ギターもセミアコのES-335でのカッティングで、現代ではかなり珍しい。しかしベースだけはボトムの効いた、比較的現代的な音づくりだ。
そのインコグニートから本作を選んでみた。なお、「Don't You Worry about a Thing」はスティービー・ワンダーの曲で、ハイラム・ブロックのアルバム「Carrasco」にもラテンのアレンジで収録されている。
本作はバンドとしては過渡期にあり、コンセプトとしては若干の中途半端感があるややくどめのサウンドとなっている。バンドとしての完成度でいえば、「Positivity」がベストであろう。でも、本作のくどさが個人的にはちょっといい。
リズム体は、現ジェフ・ベック・バンドの2人、ランディー・ホープテイラーとアンディー・ギャンガディーンである。しかし、ドラムは次作の「Positivity」からリチャード・ベイリーに変わってしまった。サウンドの変化は、ドラマーに依るところも大きい。おそらく、ブルーイはちょっと手数の多めなフュージョンドラマーであるアンディーを嫌い、すっきりブリティッシュ・ファンクのリチャードを入れたのではないか。でも、アンディーのドラムの方が私好みである。なお、リチャードは、ジェフ・ベックの「Blow by Blow」でも叩いているドラマーだ。
最近のややオーバープロデュースな作品はもうひとつかなとも思う。彼はどちらかといえばソングライターではなくプロデューサーであり、その能力を認知させた今、彼にとってもはやインコグニートの存在価値は無いのかも知れない。最新作「Life Stranger Than Fiction」には、アベレージ・ホワイト・バンドの「Pick Up the Pieces」がほとんどオリジナルと同じアレンジではいっているが、こんなの全く意味不明である。
ブルーイのプロデュースには注目すべきかも知れないが、インコグニートはもういいかも知れない。本作から「100°and Rising」までの3枚を買おう。どれか1枚なら「Positivity」だ。
Discography
1981 Jazz Funk
1991 Inside Life
1992 Tribes, Vibes & Scribes
1993 Positivity
1995 100°and Rising
1996 Beneath the Surface
1997 Blue Moods
1999 No Time Like The Future
2001 Life Stranger Than Fiction
2002 Who Needs Love?
2004 Adventures in Black Sunshine
選外:
Awa Yio / Ivan Lins(イヴァン・リンス)
ヴィニーも参加している好盤。イヴァン・リンスはどれもいいね。ワンパターンだけど。
Clear Air Turbulence(鋼鉄のロック魂) / Ian Gillan Band(イアン・ギラン・バンド)
パープル脱退後、最初のプロジェクトの2枚目。この初代イアン・ギラン・バンドは、ちょっとプログレしててなかなかかっこいい。ドラムは後にゲイリー・ムーアのG-FORCEに参加するマーク・ナウシーフだが、ちょっとへたっぴながら味がある。下手なのに好きなドラマーってこのヒトだけかな。ぜひぜひ聞いて。しかし、イアン・ギランはこのあとハード路線に走るのだがカス。副業(なんだっけかの経営)もうまくいかないって時にパープル再編のハナシに乗るんだよな。オトナってやだよね。しかし、邦題がひどい。「はがねのろっくだましい」と読みます。さらにジャケットもしどい。(T_T)