この人

第8回: Clarence Penn

 クラレンス・ペンは、いろいろなスタイルの音楽に対応可能なヴァーサタイルなドラマーの中で、トップクラスに位置する。15歳でセミプロとして活動を始めてから、ベティー・カーター、エリス・マルサリス、ウィントン・マルサリス、ジャッキー・テラソン、ロバータ・フラック、ディジー・ガレスピー、ダイアン・リーブス、サイラス・チェスナット、スティーヴン・スコット、ステップス・アヘッド、マイク・スターン、レイチェルZなどのツアーやレコーディングに参加した。彼の世代の中で、最もコールのかかるドラマーの一人であろう。

 68年生まれ。ミシガン州デトロイトで成長し、小学校3年生の時に最初のドラム・セットを得た。「隣人がドラムを演奏していて、学校から帰ると毎日練習するのを聞いていた。」と語る。練習は好きではなかったが、ミシガンの有名な芸術学校であるインターローシェン芸術アカデミーでレッスンを続け、高校の高学年にはかなりのレベルに達していた。そこで、安定したクラシックの技術を身につけたが、次第にフリーな音楽に引きつけられるようになった。

 アカデミーの教師から、彼のグループで演奏することを強く熱望され、メンバーになった。こういった、大人達との演奏はペンの生活を変えた。「学校で学んだことと演奏とが結合したその経験は、ドラムをさらに追求する望みを与えた。」と語る。その後、インターローシェンに戻り、様々な学校行事で演奏し、他の学生とバンドを組んだ。

 高校を卒業すると、マイアミ大学でジャズとクラシック・パーカッションのプログラムを学んだ。しかし約1年後に、ウィントン・マルサリスの提案で、彼の父親であるエリスが教鞭を取っているバージニア・コモンウエルス大学へ移った。「私は高校1年の時にウィントンに出会った。」と彼は語る。「彼は私の高校へ来て、数年の間は私の助言者になった。彼は、何を行うべきかについて私にしばしば助言した。」

 ウィントンのみならず、多くの人が彼の急成長する才能に注意を払っていた。89年には、有名なドラマーであるアラン・ドーソンのレッスンを受けるために、全国芸術基金(NEA)から奨学金を受け取った。「バージニアの大学の夏休みに、アランと個人のレッスンをボストンで受けた」と語る。「それは大きな経験だった。アランは最良の教師のうちの1人だ。」

 さらには、エリス・マルサリスから、彼のトリオに参加するように依頼された。そのグループでは4日間もの週末を取られてしまう。しかしエリスは、彼が仕事を選ぶことを確信していた。90年、マウントフジ・ジャズ・フェスティバルに出演するために、エリス・マルサリス、ウィントン・マルサリス、レジナルド・ヴィールと来日した。そこで、ルイス・ナッシュは、この若いドラマーの演奏を聞いた。ルイスはとても感動したことを記憶にとどめて、ある時、才能のある音楽家を探していたベティー・カーターに推薦した。ルイスがあまり強力に推薦したため、ベティはオーディションなしで彼を雇った。

 数年間ベティと活動し、次にスタンリー・クラークと演奏し、サイラス・チェスナットのトリオと、スティーヴン・スコット・トリオのメンバーになった。95年には、有名なフュージョン・グループ、ステップス・アヘッドに参加し、2枚のアルバムを残した。そのうちの1枚には、彼がペンシルバニアで書いた曲が収録された。さらに、デビッド・サンチェス、スライド・ハンプトン、フレディ・ハバード、ケニー・バロン、小曽根真、ケビン・マホガニー、とキャリアを重ねていった。

 「ミュージシャン達が、私のヴァーサタリティー、感度、プロ意識をを知ることは重要だ。」と彼は語る。「私は、自分の演奏に非常に真剣であり、彼らが望むことがすべて出来ることを知って欲しい。」

 96年には、メジャー・ジャズ・レーベル、クリス・クロスから、ファーストアルバム「Penn's Landing」をリリースした。97年にはニューヨークタイムズ・ジャズ批評家によって、その年のベストアルバムのうちのひとつに選ばれた。

 ベティー・カーターが最初のビッグ・チャンスだった。これはグレッグ・ハッチンソンと共通だ。スタイルも古典と先端をうまく融合させている。いかにもウィントンが好きそうなカンジのドラマーだが、彼のアルバムでは演奏していない。

 気持ちのいいパルスとよく歌うフレーズ。アプローチは比較的オーソドックスだが、ちょっと新しい。この辺の加減がワタクシの好みだ。

 シンバルの収集家として有名らしく、多くのオールドKジルジャン、いわゆるトルコKを持っているそうだ。

 左手はマッチドグリップで、ブラシもマッチドなんだそうだ。最近、マッチドのジャズドラマーが一時より少ない。

 97年からは小曽根真のトリオに参加している。一度見に行きたいと思っているんだけどな。

Discography

solo
1996 Penn's Landing 
2001 Play-Penn 
2002 Saomaye 

side man
1992 It's Not About The Melody / Betty Carter
1993 Joshua Redman / Joshua Redman
1994 Revelation / Cyrus Chestnut
1994 When The Time Is Right / Javon Jackson
1995 A Cool Blue / Tim Warfield
1995 Dark Before The Dawn / Cyrus Chestnut
1995 Renaissance / Stephen Scott
1995 The Dark Before The Dawn / Cyrus Chestnut
1995 Vibe / Steps Ahead
1996 A Whisper In The Midnight / Tim Warfield
1996 Street Scenes / David Sanchez
1996 Stepping Stones / Loston Harris III
1997 Another Time Another Place / Kevin Mahogany
1997 May I Feel / Melissa Walker
1997 Midnight In The Garden Of Good And Evil / Soundtrack
1997 The Trio / Makoto Ozone
1998 Maiden Voyage / Nnenna Freelon
1998 Remembrances / Jon Faddis
1998 Three Wishes / Makoto Ozone
1998 Dear Oscar / Makoto Ozone
1999 Blue Smith / Tommy Smith
1999 Moment of Truth / Melissa Walker
1999 No Strings Attached / Makoto Ozone
2000 Brighter Day / Ronny Jordan
2000 Portrait Of Kevin Mahogany / Kevin Mahogany
2000 Pandora / Makoto Ozone
2001 I saw the sky / Melissa Walker
2001 Over The Rainbow / Jimmy Scott
2001 So Many Colors / Makoto Ozone
2002 Art of the Invisible / Adam Rogers
2002 Cafe Electronica
2002 Jazz Is... / Tim Warfield
2002 Man of many colors / Walt Weiskopf
2002 The Infinite / Dave Douglas
2003 Allegory / Adam Rogers
2003 Moon Glow / Jimmy Scott
2003 Norte E Sul / Luciana Souza
2003 North And South / Luciana Souza
2003 Reborn / Makoto Ozone
2004 Dear Oscar / Makoto Ozone
2004 Generations / Gary Burton
2004 Les Fleurs Bleues / Stefano Bollani
2004 New Spirit / Makoto Ozone
2005 Apparitions / Adam Rogers
2005 Journey To Donnafugata / Salvatore Bonafede
2005 Last Quarter Moon / Chiara Civello
2005 Real / Makoto Ozone
2005 Rolling Stones Project / Tim Ries
2005 Ruby, My Dear / Richard Galliano
2006 Meaning & Mystery / Dave Douglas
2007 If You Love Me / Richard Galliano
2008 Outside In / Gary Versace

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Last Update : 2008/05/30