USのドラム市場には、いわゆるガレージメーカーがいっぱいある。
ドラムを作る過程で一番難しいのは、シェル(胴)の製造だ。ドラムのシェルは、プライウッドと呼ばれる、板を何層にも貼り合わせて丸く成形したものが多く使われている。成形するためには加熱とプレスが必要なので、シェルがはいる大きさの釜のような成型機が必要だ。これはかなり大がかりな設備である。さらにはシェルのサイズごとに釜が必要なので、かなりの数になる。そのため、資金力のある大きいメーカーしか作れない。
ドラム製造は設備投資規模が大きく、リスキーな事業だった。
しかし、シェルの製造だけを行うメーカーが現れた。一番有名なのは、USのケラーだろう。今やグレッチやスリンガーランドなどの有名ブランドも、ここを使っている。また、各ブランドの普及クラスのシェルのほとんどは台湾メーカー製だ。MAPEXの工場が、世界中に普及品をばらまいている。
シェルさえ手に入れば、その後の行程はそれほど大きな設備を必要としない。買ってきたシェルを適当な深さにぶった切り、エッジを切り、塗装し、パーツを組む。ガレージ程度のスペースで事足りるわけだ。DW、カノウプスあたりは、今やガレージメーカーとは言えない規模になっている。
ガレージメーカー(失礼)として、日本でも知名度があるのは、ポークパイ、ダネット(Dunnett)、OCDP(オレンジカウンティ)、ブレイディ(Brady)などか。この辺は、日本の輸入代理店がそれなりの広告を打って、それなりに売れている、と思われる。
先に述べたように、プライウッドのシェルを作るのには大がかりな設備が必要だ。しかし、もっと手軽な製法がいくつかある。カノウプスのセルコバのようなくりぬき胴や、ブロックやステーブと呼ばれるシェルが代表だ。
ステーブを使っていることで有名なのはブレイディだろう。このブランドでは「Jarrah Block」という商品名でこのシェルを使った製品を出している。作り方は「桶」と似ており、長方形の板を円形に並べて接着する。
この「桶=ステーブ」シェルのウリを訳すとこうなる。
「キミらは接着材を鳴らしているのかい? プライウッドのシェルを貼りつけるのには、すごい面積の接着剤が使われているんだぜ。そのうえ、板を無理矢理曲げてあるからストレス(応力)がかかってる。ステーブはそんなコトとは無縁だぜ。接着剤もほんのちょっとしか使ってないし。それに、木目を見なよ。力がかかる上下方向に木目が走っているだろ。フツーのプライウッドは木目が横になってるじゃないか。(ちなみにソナーはプライでも木目がタテ)これじゃ、力を支えられないよ。どうだい。ステーブはプライよりも全然いいってことがわかるだろ?」
ああ、前置きが長い・・・。
てなわけで、ハードバップドラムスというガレージメーカーで作ってもらったのがこいつだ。同じくブビンガ製ステーブ胴のスネアが良かった。なので、好きなバーチで作ったらどうなるかということでオーダーした。
この小さなメーカーは、手に入るものであれば、なんでも組み合わせてでっちあげてくれる。昔、ギターもコンポーネントがはやったでしょ。ボディはなんとかでピックアップはかんとかで、とかとか。ドラムもコンポーネントの時代・・・になるのかな。
シェルはステーブのバーチ。厚さ10mm(3/8インチ)のバーチ材、20枚でできている。このシェルはもちろんOEMで、Joshua Tree Percussionというメーカーが作っている。
パーツはオーダーできるが、標準品にした。スイッチはニッケルドラムワークスのピストンドライブだ。OCDPやクラビオットもこのスイッチを使っている。こいつかダネットがメーカー推奨だ。ラグはブラスのチューブ。フープはスリンガーランド風のスティック・セイバーで8テンション。前にオーダーしたときは、フツーのトリプルフランジだったけどな。ま、どっちでもいいけど。スナッピーはわれらが日本のカノウプス。
では、叩いてみましょう。ミュートは小さめに切ったムーンジェル。おお。いいんでないかい。素直な音だ。スナッピーの反応もいい。スナッピーがゆるむのがネックだな。うーみゅ。
Hard Bop Drums Stave Birch (ハードバップドラムス・ステーブ・バーチ)
サイズ: 14×5
シェル: ステーブ・バーチ 20ピース 10mm
カラー: ナチュラル(セミグロス・ラッカー)
フープ: スティック・セイバー 8テンション
スイッチ: ニッケルドラムワークス ピストンドライブ
スナッピー: カノウプス ノーメッキ 内面当たり20本
ヘッド: 打面 レモ コーテッド・アンバサダー
裏面 レモ スネアサイド
年式: 06年