解説

J-POPS批評 シクラメンのかほり / 布施明 小椋佳

 赤いスイートピーで、サビのメロディが変更されたというハナシがある。この楽曲もその仲間である。

 作詞作曲は小椋佳。しかし、レコーディングされずにお蔵入りとなり、経緯は不明だが布施明に提供された。この曲は布施明最大のヒットとなった。

 このヒットをきっかけに小椋佳は注目を浴び、NHKでコンサートを行った。私はラジカセでこの番組を録音して、何度も聞いた。この模様は「遠ざかる風景」というアルバムで聞くことができる。この時に「シクラメンのかほり」をセルフカバーしているのだが、布施明版とAメロ後半のメロディが違うのだ。「驚いたように振り向く君に」のところ。

 最高音はそのあとの「季節がほほを染めて」の「季」で、この音程はいっしょ。その前の導入が違う。布施版は盛り上げて「きーせつがー」につなげるのだが、小椋版は低めの音程でさりげなく入って、「きー」が高く印象付けられる。おそらく布施のキャラに合わせて、布施サイドで改変されたのだろう。

 個人的には、小椋版の方が好きだ。しかーし、なんで小椋佳は普及した布施版で歌わなかったのか。

 これはさ、小椋版で歌う布施明が聞きたいな。

 ところで、私は小椋佳がけっこう好き。母親の影響だな。全曲集も持っている。でも、初期の方が好きで中期以降の「愛燦燦」とか「夢芝居」とかその辺以降は好きじゃない。ベスト楽曲だが、いまぱっと浮かんだのは「屋根のない車」だ。歌詞にあまり興味のない私でも、この曲の世界観は好きだ。たんたんとしたメロディに、8小節の短いサビという組み合わせがいい。で、最後に仕掛けがある。素晴らしい。この曲のために、S2000に乗っていると言っても過言ではない。(過言です)

 ということで小椋佳版の「シクラメンのかほり」と「屋根のない車」を聞いてみてください。

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Last Update : 2019/12/09