ドラム

SONOR Chrome Over Aluminum Snare D-424

 スチールのスネアって、意外と歴史が浅い。

 60年代以前にメタル胴のスネアといえば、材質はブラスだった。ブラスにクロムメッキをかけたものが主流で、クロム・オーバー・ブラス(COB)と呼ばれている。有名なのは、グレッチの4160スリンガーランドのスタジオキング(ジーン・クルーパー・モデル)ロジャースのダイナソニック、などだ。ラディック(前身のWFL含む)だとパイオニアとかスーパーとかブラックビューティーとか。ブラックビューティーはブラスだけどCOBではないか。ブラッククロムメッキね。

 60年代になると、ブラスに代わるメタルスネアが出始める。

 世界一売れたスネア(推測)であるラディックのLM400シリーズの発売は64年頃。これはアルミ合金にクロムメッキをかけたもので、ラディックはラディアロイと称している。これをスチール胴だと思っているヒトは多い。同社のアクロライト(アルミ合金胴)の発売は62年頃であり、先にアクロライトを出して、それにメッキをかけてLM400シリーズを出したというわけだ。なお、60年代のメッキ技術は未熟で、このころのLM400シリーズは現在ではメッキがぼろぼろにはげたものが多い。もう少し熟成してから出せば良かったのにね。

 ソナーは60年頃に、それまでのビーチ製スネアに加えて、アルミニウム胴にクロムメッキをかけたシェル(以降COA:クロム・オーバー・アルミニウム)を採用したD-424(内面当たり)、D-426(パラレル・アクション)を出した。時期を考えると、ラディックに先駆けていたということになる。64年にマイナーチェンジがあり、ラグがセパレートのティアドロップからワンピースになり、スイッチがカンチレバー式から樹脂製のロータリー式になる。そして67年頃に、シームレスのスチール胴を採用したD-444を発売する。フェロー・マンガン・スチールってやつで、ソナーのメタルはこれ以降、87年にシグネチャーのブロンズが出るまでの20年間、メタルはスチール1本だった。よっぽど自信があったのかウッドがメインだったのか。

 ソナーの古いスネアについては、こちらを参照ください。

 スチール(鉄)は、当時の技術だと加工が容易ではなかったようだ。そのため、60年代以前には出現していない。ブラスは金管楽器に使われているくらいで、柔らかくて延びるから加工がカンタンだもんね。

 このD-444って、もしかすると世界初のスチール胴かな? 誰か教えて。

 D-444の後継機であるD-454を愛用している。結構いい。ソナー・コレクターとしては、もうちょっと古いのにも手を出したい。ということで購入したのが、このD-424(マイナーチェンジ後)だ。

 仕様はD-444とほとんど同じ。スイッチはロータリー式のもので、D-424(マイナーチェンジ後)では樹脂製だがD-444ではスチール製に変更されている。壊れやすかったんだろうね。両者の見分け方はそのスイッチ。D-424(マイナーチェンジ後)のスイッチカバーは丸い黒、D-444のは丸いクロムメッキだ。ま、オリジナルのスイッチが残存してたらだけどね。それ以外は、ほとんど同じルックスだ。

 実は、購入時にはD-424かD-444かわからなかったのだな。今ならわかるけど。

 米国からネット通販でやってきたのはD-424だった。さらに、同じ年代で胴がビーチ製の、D-471も買ってしまった。この2台、パーツはほぼ同じ。バラシは2台同時に行ったので、以下の文章はほぼ共通だ。

 さて、バラシてみましょう。

 まず、テンションボルト。ソナーの古いのは、伝統的なスロッテッドという溝が入っているヤツ。この溝の幅はだいたい2mmなんだけど、現行より狭くてチューニングキーが入らない。ふざけてるね。仕方がないので、木工用の金具を使って自作した。後に、なぜか現行のチューニングキーの中で「MK」というタイプだと入ることが判明したので、そいつを購入した。

 フープはトリプルフランジなのだが、上面のフランジが内側に折れているという珍しいタイプだ。スリンガーランドのスティック・セイバーをさらに曲げたカンジ。変わってるね。打面側のフープがちょっとゆがんでいるため、手修正。こんなもんかな。

 で、この2台、結構仕様が違う。ラグを止めているネジだが、471が六角ナットで424は袋ナット。ラグに入っているテンションボルトが入るナットも、471は汎用の六角ナットをウレタンで止めているが、424はウレタンが廃されて楕円形状の専用ナットが入っている。ミュートの仕様も微妙に違う。フツーに考えると、471が初期型で424が後期型なのか。しかし、セパレートラグからワンピースラグになったのが64年で、444のデビューにともない424が消滅したのが66年。となると、471が64年くらい、424がそれ以降で66年までってことか。そんなに早く変えるかな。それにしても471のネジやワッシャーはさびさび。変えられるものは変えてしまう。しかし、ラグを胴に止めるネジが4mmってのは細いね。

 この年代の471や424のスイッチは、ロータリー式の樹脂製なのだが、471のは壊れたのかラディックに交換されている。424のは「still works」ということだったが明らかに壊れている。再生も考えたが実用性を考慮してラディックのスイッチにした。バイヤーはスイッチを送ると言っていたが、雲隠れしたようだ。ああ、海外ってリスキー。

 シェルは結構厚い。2〜3mmくらいかな。ミュートは撤去。いつものように、シェルのコーティングはブリス、金属部品にはクレ・スーパーポリメイト。各部をグリスアップ。エッジにはろうを塗布。ヘッドはレモのコーテッドアンバサダーとスネアサイドという定番。ボルトのワッシャーは、パールの樹脂製がムリすれば入る。スナッピーはパールのノーメッキとした。バット側のスナッピーのひもは結ぶタイプ。はいできあがり。

 さっそくブルース・バンドで使用。まずまずかな。しかし、ピッチを上げるとボルトのトルクが結構でかい。8テンションだしね。

SONOR Chrome Over Aluminum Snare D-424
  (ソナー クロム・オーバー・アルミ スネア)
 サイズ:   14×5
 シェル:   クロム・オーバー・アルミ(COA)
 フープ:   スチール・プレス 8テンション
 スイッチ:  ラディック 両側調整
 ヘッド:   レモ・コーテッド・アンバサダー / スネアサイド
 スナッピー: パール ノーメッキ 20本 内面当たり
 年式:    64〜66年

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Last Update : 2002/12/23